296 / 337
第26章 番外編☆dolce
1
しおりを挟む
店の閉店時間が近付くと、自然と落ち着きがなくなる俺。
最後の客を送り出し、レジ締めをしながら気にするのは、店の入り口と時計ばかり。
そろそろ来る頃かな……
時間に正確な人だから、いつも閉店の五分前には必ずと言って良い程、あの人はこの暖簾を潜る。
そしていつもと同じように、今日もやっぱり、「お疲れ様。今日も冷えるね」そう言って口元まで覆ったマフラーを外すんだ。
「もう帰れそう?」
「レジ締めだけしたら今日は上がりだよ」
電卓とレジから視線を逸らすことなく応えると、その人はせっかく外したマフラーを再び首に巻こうとする。
「そっか、じゃあ外で待ってるから」
しかも、また寒空の下に戻って行こうとするから慌てる。
「いいよ、中で待っててよ」
俺のためにわざわざ来てくれたのに、この寒空の下で待たせるわけにはいかない。
「でも、皆まだ仕事中だし、迷惑だろ」
それでもバイト君達の手前、外へ出て行こうとするんだから、真面目って言うか、何て言うか……
ま、そういうとこが好きなんだけどさ。
「俺が良いって言ってるんだから、気にしないで?」
だって俺、これでも一応店長だし。
「そう? じゃあ邪魔にならない所で待たせて貰うよ」
「うん、俺も急いで済ませるから」
俺が笑顔を向けると、漸く着ていたダウンを脱ぎ、入り口近くのカウンターの一番端に腰を下ろした。
俺はフッと息を吐き出すと、集計表と照らし合わせながら、レジの中の金を数え始めた。
元々計算が得意じゃない俺にとっては、一日の中でこのレジ締めが一番の苦痛を感じる時間でもある。
店長と言う立場上仕方ないことだと分かっていても、苦手なモンはどうしたって苦手なわけで……
急ぐと言った割には、一円の狂いもなく集計を終えた頃には、時刻は天辺を越えようとしていた。
最後の客を送り出し、レジ締めをしながら気にするのは、店の入り口と時計ばかり。
そろそろ来る頃かな……
時間に正確な人だから、いつも閉店の五分前には必ずと言って良い程、あの人はこの暖簾を潜る。
そしていつもと同じように、今日もやっぱり、「お疲れ様。今日も冷えるね」そう言って口元まで覆ったマフラーを外すんだ。
「もう帰れそう?」
「レジ締めだけしたら今日は上がりだよ」
電卓とレジから視線を逸らすことなく応えると、その人はせっかく外したマフラーを再び首に巻こうとする。
「そっか、じゃあ外で待ってるから」
しかも、また寒空の下に戻って行こうとするから慌てる。
「いいよ、中で待っててよ」
俺のためにわざわざ来てくれたのに、この寒空の下で待たせるわけにはいかない。
「でも、皆まだ仕事中だし、迷惑だろ」
それでもバイト君達の手前、外へ出て行こうとするんだから、真面目って言うか、何て言うか……
ま、そういうとこが好きなんだけどさ。
「俺が良いって言ってるんだから、気にしないで?」
だって俺、これでも一応店長だし。
「そう? じゃあ邪魔にならない所で待たせて貰うよ」
「うん、俺も急いで済ませるから」
俺が笑顔を向けると、漸く着ていたダウンを脱ぎ、入り口近くのカウンターの一番端に腰を下ろした。
俺はフッと息を吐き出すと、集計表と照らし合わせながら、レジの中の金を数え始めた。
元々計算が得意じゃない俺にとっては、一日の中でこのレジ締めが一番の苦痛を感じる時間でもある。
店長と言う立場上仕方ないことだと分かっていても、苦手なモンはどうしたって苦手なわけで……
急ぐと言った割には、一円の狂いもなく集計を終えた頃には、時刻は天辺を越えようとしていた。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる