君の声が聞きたくて

誠奈

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第25章  Voice

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 「なあ、智樹」
 「何……?」
 「俺、《永遠》って言葉、あんまり好きじゃないから、永遠に……なんて約束は出来ないけど、それでもずっと俺の傍にいて欲しい」


 智樹さえ傍にいてくれたら……


 「うん……」
 「それで……さ、俺のためだけに歌って欲しい」


 他の誰でもなく、俺だけのために……


 「翔真……さん」
 「駄目……かな?」
 「ううん、駄目じゃない。俺も……」
 「俺も……、何?」
 「俺も翔真さんのためだけに歌いたい。だからずっと俺の傍にいて、聞いてて欲しい。それでね……」
 「うん……」


 聞かせて?
 智樹の願いなら何でも叶えて上げるから。


 「もし俺が迷子になったら、見つけて欲しいんだ。俺、めいっぱい大きな声で歌うから、だから、翔真さんに見つけて欲しい」


 馬鹿だな、智樹は。


 「どこにいたって見つけるよ、俺が必ず。つか、俺の傍離れなきゃ良いんじゃない?」
 「あ、そっか、そうだよね」

 
 それに、智樹が傍にいないと、俺が不安になるから……


 「なあ、智樹?」
 「ん?」
 「笑っていような?」


 いつだって二人で……


 「出来るかな、俺……」
 「出来るよ、俺達なら」


 智樹と二人でなら、どんな困難も、襲い来る荒波だってきっと乗り越えて行ける。


 「もし出来なかったら? その時はどうするの?」
 「その時は俺が無理にでも笑顔にしてやる」
 「じゃあ逆だったら? 翔真さんの顔から笑顔が消えたら、俺はどうしたら良い?」


 そんなの簡単だよ。 


 「その時は、まだ歌ってくれれば良い」
 「そんな簡単なことで良いの?」
 「うん、それだけで良い」


 君の声が聞けるだけで……、それだけで俺はまた笑えるから。


 だから君の声を……



【君の声が聞きたくて】ー完ー
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