君の声が聞きたくて

誠奈

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第24章  tempestoso

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 久しぶりのキスは、お互いどこかたどたどしくて、まるでファーストキスのような感覚に、唇を離したと同時に二人して吹き出してしまった。


 だって、お互い散々泣いた後だから、顔なんてグチャグチャで、二人して顔見合わせては声を立てて笑っててさ、まだこんな風に笑えるんだ、って思ったら今度は嬉しくなっちゃって……

 でもふと思ったんだ……


 「驚かない……の?」

 俺が聞くと、翔真さんは「何が?」とでも言いたげに首を傾げた。

 「俺、声出せるようになったんだよ?」


 まだたまに突っかかってしまうこともあるけど……


 「ああ、そのことなら、松下からも話は聞いてたから」


 そう……なんだ?


 潤一さん、そんなこと一言も俺には言わなかったけど、そうだよな、元々翔真さんと潤一さんは友達だし、そう考えれば翔真さんが俺のこと知ってたとしても不思議じゃないか。


 でも少しくらいは驚いて欲しかったな。


 「良く頑張ったね」

 そう言って翔真さんが俺の髪を撫でてくれる。

 俺をガキ扱いするのは、三年経っても変わらないみたいだ。ま、翔真さんから見たら、俺なんてまだまだガキなんだろうけど……

 「今日は何時まで仕事なの?」
 「えっと、全部片付けてからだと、多分深夜になっちゃうと思うけど……」

 予約以外の客もけっこう入ってるし、頑張っても天辺回るのは確実だ。

 「そっか、じゃあ無理かな」
 「えっ……?」
 「いや、深い意味はないんだけど……さ、久しぶりに会ったことだし、ゆっくり飲めたらな……と思って。そ、それにほら、話したいこともあるし……」

 月明かりに照らされた翔真さんの顔が、心做しか赤く染まってるように見えるのは、俺の気のせいなのか?

 「あ、で、でも、無理にとは……。また次の機会にでも……」

 いや、俺の気のせいなんかじゃないみたいだ。

 「俺ね、今日は本当は休みの予定だったんだ」
 「そ、そう……なの?」

 でも翔真さん達グループの予約が入ったおかげで、急遽出勤することになったんだ。だからってわけじゃないけど……

 「少し早めに上がらせて貰おう……かな……」


 それくらいの我儘、言っても良いよな?
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