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第23章 passionato
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「誰が最低だって?」
拳をテーブルに叩き付けたくなるような怒りに、声までもが震える。でも上杉は意に介することなく、フンと鼻を鳴らすと、まるで俺を蔑むような、そんな笑みを浮かべた。
「だってそうじゃないっすか。口では相手のこと考えてるとか、格好良いこと言ってっけど、結局は自分のことしか考えてないじゃないっすか」
「そんなことは……」
ない……と、果たして今の俺が言えるのだろうか……
自ら課した戒めに雁字搦めになって、ただの一歩も踏み出せずにいる俺に、一体どんな言い訳が出来るんだろう……
俺は握り締めていた拳を開き、そのまま顔を覆い、ハッと息を吐き出した。
「そうだよ、お前の言う通りだよ、上杉。俺は逃げてんだよ、智樹から。智樹の為だと言いながら、結局自分の都合ばっか押し付けてたんだよ」
思えばいつだってそうだった。
狡い男なんだよ、俺は……
「智樹に別れようって言われた時、俺がどう思ったか分かるか?」
「……いえ」
「俺な、ホッとしたんだよ。智樹が別れを切り出してくれた時……」
勝手だよな、きっかけを作ったのは俺なのに……
「俺から別れを切り出せば、智樹を傷付けることになると思ってな。でもさ、それってとんだ思い違いでさ……。実際には、智樹の口から別れの言葉を言わせることが、どれだけ智樹を苦しめることになるのか、全く分かってなかったんだよ」
自分が傷付きたくないがために、智樹を深く傷付けたんだ。
「馬鹿だよな、俺は。今頃気付いたってもう遅いのに……」
目頭が熱くなって、顔を覆った手の平を、涙の粒が濡らす。それに気付いた上杉が、ティッシュの箱をそっと差し出した。
「俺は……、今からだって全然遅くないと思いますけどね」
えっ…?
上杉のその一言に、俺は顔を覆っていた手を離し、箱からティッシュを一枚抜き取った。
拳をテーブルに叩き付けたくなるような怒りに、声までもが震える。でも上杉は意に介することなく、フンと鼻を鳴らすと、まるで俺を蔑むような、そんな笑みを浮かべた。
「だってそうじゃないっすか。口では相手のこと考えてるとか、格好良いこと言ってっけど、結局は自分のことしか考えてないじゃないっすか」
「そんなことは……」
ない……と、果たして今の俺が言えるのだろうか……
自ら課した戒めに雁字搦めになって、ただの一歩も踏み出せずにいる俺に、一体どんな言い訳が出来るんだろう……
俺は握り締めていた拳を開き、そのまま顔を覆い、ハッと息を吐き出した。
「そうだよ、お前の言う通りだよ、上杉。俺は逃げてんだよ、智樹から。智樹の為だと言いながら、結局自分の都合ばっか押し付けてたんだよ」
思えばいつだってそうだった。
狡い男なんだよ、俺は……
「智樹に別れようって言われた時、俺がどう思ったか分かるか?」
「……いえ」
「俺な、ホッとしたんだよ。智樹が別れを切り出してくれた時……」
勝手だよな、きっかけを作ったのは俺なのに……
「俺から別れを切り出せば、智樹を傷付けることになると思ってな。でもさ、それってとんだ思い違いでさ……。実際には、智樹の口から別れの言葉を言わせることが、どれだけ智樹を苦しめることになるのか、全く分かってなかったんだよ」
自分が傷付きたくないがために、智樹を深く傷付けたんだ。
「馬鹿だよな、俺は。今頃気付いたってもう遅いのに……」
目頭が熱くなって、顔を覆った手の平を、涙の粒が濡らす。それに気付いた上杉が、ティッシュの箱をそっと差し出した。
「俺は……、今からだって全然遅くないと思いますけどね」
えっ…?
上杉のその一言に、俺は顔を覆っていた手を離し、箱からティッシュを一枚抜き取った。
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