君の声が聞きたくて

誠奈

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第23章  passionato

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 寝起きの俺を襲った激しい頭痛に、ヤバいと思いつつも、体温計を脇に差し込んだ。

 待つこと数秒......、ピピッと電子音が鳴って、脇から取り出してみると、そこには俺の予想を遥かに超えた数字が表示されていて……

 「これじゃ流石に出勤は出来ないか」

 無理をすればなんとかはなるが、その分周りに迷惑をかけることにもなりかねない。


 どちらにせよ結局は迷惑をかけることになるなら、だったらいっそのこと……


 俺はズキズキと痛む頭を押さえながらベッドを抜け出ると、脱ぎっぱなしになっていたコートのポケットからスマホを取り出した。
 アドレス帳から会社の番号をピックアップして、コールボタンを押す......けど、どれだけ鳴らしても一向に電話が繋がる気配がない。
 それもその筈、始業時間にはまだ二時間も早いんだから、事務所に人がいるわけがない。

 「仕方ない、もう少し後でかけ直すか」


 一眠りしたら、もしかしたら症状が改善しているかもしれないし……


 俺は起きたついでにトイレを済ませ、冷蔵庫にストックしてあるペットボトルの水を手に、再びベッドに戻った……が、どうせならタオルの一枚でも濡らして来れば良かったと、ベッドに横になってから気が付いた。

 仕方なくペットボトルを額に当てると、キンと冷えた水の冷たさが気持ち良くて、脈打つように痛む頭に、瞼をキュッと固く閉じると、そのまま深い眠りに落ちて行った。


 会社に電話をいれないと、と思いつつ……







 熱があるせいだろうか、虚ろな意識の中で、俺は智樹の声を聞いていた。

 普段喋っている時とは全く違った印象を持つ、どこか郷愁を思わせるような、智樹の歌声を……


 でも残念なことに、その姿を見ることは出来なくて……



 俺はただただ智樹の歌声に耳を傾けることしか出来なかった。
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