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第22章 subito
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ほんのちょっと……のつもりだった。でも思ったよりも深く眠ってしまったみたいで……
診察を待つ間も半分寝惚けたままの俺は、待合室のベンチで背中を丸め、何度も欠伸を噛み殺す。その度に潤一さんがサングラス越しに俺を睨み付けるけど、仕方ないじゃん?
夜中までバイトしてんのに、朝は早くから起こされてさ。なのにそんな怖い顔で睨まなくたって良くない?
つか……
『 潤一さんこそ、いつまでサングラスしてんの?』って言いたいところだけど、やめた。今潤一さんを怒らせたら、それこそ置いてきぼり食らっちゃいそうなんだもん。
ま、仮にそうなったとしても、今日は雅也さんが一緒だから安心だけどね。
そんなことをぼんやり考えて、一人クスクスと笑っていると、「大田さん、どうぞ」診察室のドアが開き、若い女の看護師が俺の名前を呼んだ。
俺は一つ大きく伸びをすると、「行って来るね」雅也さんと潤一さんに声を掛けてから腰を上げた。
てっきり一人で診察室に入るもんだと思っていたから……
なのに雅也さんが俺とほぼ同時に腰を上げるから、診察室へと向かって進めようとしていた俺の足がピタリと止まった。
「俺も一緒に行くよ。ほら、一応智樹の保護者代わりでもあるわけだしさ、ご挨拶くらいしとかないとね?」
「え、マジで?」
「うん、マジで」
雅也さんは大袈裟に肩を竦めて見せると、俺の肩をポンと叩いた。そしてそのまま俺の背中を押すようにして、俺と一緒に診察室の中へと入った。俺達より数秒遅れはしたけど、潤一さんも一緒に……
「おう坊主、待ってたぞ」
森岡先生は俺が診察室に入るなり、いつものように白衣の裾を翻すようにして、身体ごとズッポリ包んでしまうような革張りの椅子に腰を下ろした。
そして俺の両隣りに立つ二人に視線を向けると、「なんだ、今日は保護者同伴か?」まるでヒソヒソ話でもするように口元に手を当てニヒヒと笑うから俺も、「そ、俺の父ちゃんと母ちゃん」軽い冗談で返しながら、森岡先生を真似てニヒヒと笑った。
診察を待つ間も半分寝惚けたままの俺は、待合室のベンチで背中を丸め、何度も欠伸を噛み殺す。その度に潤一さんがサングラス越しに俺を睨み付けるけど、仕方ないじゃん?
夜中までバイトしてんのに、朝は早くから起こされてさ。なのにそんな怖い顔で睨まなくたって良くない?
つか……
『 潤一さんこそ、いつまでサングラスしてんの?』って言いたいところだけど、やめた。今潤一さんを怒らせたら、それこそ置いてきぼり食らっちゃいそうなんだもん。
ま、仮にそうなったとしても、今日は雅也さんが一緒だから安心だけどね。
そんなことをぼんやり考えて、一人クスクスと笑っていると、「大田さん、どうぞ」診察室のドアが開き、若い女の看護師が俺の名前を呼んだ。
俺は一つ大きく伸びをすると、「行って来るね」雅也さんと潤一さんに声を掛けてから腰を上げた。
てっきり一人で診察室に入るもんだと思っていたから……
なのに雅也さんが俺とほぼ同時に腰を上げるから、診察室へと向かって進めようとしていた俺の足がピタリと止まった。
「俺も一緒に行くよ。ほら、一応智樹の保護者代わりでもあるわけだしさ、ご挨拶くらいしとかないとね?」
「え、マジで?」
「うん、マジで」
雅也さんは大袈裟に肩を竦めて見せると、俺の肩をポンと叩いた。そしてそのまま俺の背中を押すようにして、俺と一緒に診察室の中へと入った。俺達より数秒遅れはしたけど、潤一さんも一緒に……
「おう坊主、待ってたぞ」
森岡先生は俺が診察室に入るなり、いつものように白衣の裾を翻すようにして、身体ごとズッポリ包んでしまうような革張りの椅子に腰を下ろした。
そして俺の両隣りに立つ二人に視線を向けると、「なんだ、今日は保護者同伴か?」まるでヒソヒソ話でもするように口元に手を当てニヒヒと笑うから俺も、「そ、俺の父ちゃんと母ちゃん」軽い冗談で返しながら、森岡先生を真似てニヒヒと笑った。
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