君の声が聞きたくて

誠奈

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第17章  generalpause

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 憤りに心が震え、隠し切れない怒りにきつく握り締めた手が震えた。

 「結婚しないって、じゃあ子供は……」

 カラカラに乾いて張り付いてしまった喉の奥から絞り出された声は、まるで自分の声とは思えない程、酷く掠れていた。

 「結婚もしないでどうやって……」

 女手一つで子供を育てて行くことは決して楽な事じゃあない。ましてやそれが乳飲み子ともなれば尚更だ。
 こんなことを言うのも何だが、俺と結婚さえすれば、贅沢は出来ないが、それなりに安定した暮らしは出来る。


 なのにどうして……


 「ねぇ、どうしてそんなに結婚に拘るの?  別に結婚なんかしなくたって、立派に成立してるカップルだってあるじゃない。それにシングルマザーなんて今時珍しくもないわ」
「それは……」

 確かにそうかもしれない。
 世の中には、俺達が知らないだけで、色んな夫婦は勿論のこと、家族の形があるわけだし、それが一概に悪いこととは思わない。
 でも子供の将来を考えたら、そうすることが正解だとは、俺にはとても思えない。

 「やっぱり駄目だ。もしこの部屋では不満だと言うなら、もう少し広い部屋に引っ越したって構わない。だから、子供のためにも籍だけはきちんとしておくべきだ」

 頭の硬い男だと、融通の効かない男だと思われても良い、それが俺の男としての責任の取り方だと、俺はそう思っていた。

 でも彼女は俺を嘲るように一瞥しただけで、組んだ足をゆっくり解いて、大きくなった腹を手で支えながらソファから立ち上がると、

 「私、貴方と籍を入れるつもりも、一緒に暮らすつもりもないから」

 そう冷たく言い放って、項垂れる俺の横をゆっくりとした足取りで過ぎて行った。


 追いかけようと思った。


 部屋を出て行こうとする彼女を追いかけて、お互いが納得出来る答えが出るまで、とことん話し合うことだって、しようと思えば出来た。

 でもそうしなかったのは、彼女がどうしてそこまで俺との結婚を拒むのか、理由こそはっきりとは聞いていないが、俺の中で微かな疑念が湧き始めていた……からなのかもしれない。
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