146 / 337
第15章 diminish
9
しおりを挟む
それからはそう会話もすることなく、俺は忘れた頃に襲ってくる途轍もなく強い睡魔と戦いながらも、至極乗り心地の悪い車に揺られていた。
つか、酒も程よく入ってるからかな、やたらと酔いのが回りが早い。
そんな俺の状況を察したのか、「もう着くから」と松下が前方に向けた視線を変えることなく言った。
そしてその言葉通り、それから五分と経たずに繁華街の中心で車が止まった。
「ちょっと待ってて? あ、寝てても良いけど、駐禁対応だけ宜しくね」
「分かった。なるべく早くな?」
通常よりも三割は増しているだろう睫毛に縁取られた目でバチンと音がするくらいのウインクをされ、適当に返事を返してはみるけど、レンタカーの運転ですら怪しかったのに、左ハンドルの車なんて、とても運転出来る自信ないんだけど……
しかもアルコールも入ってるし、即時移動を命じられた場合、飲酒運転で捕まるのは俺の方だ。そんなことになったら目も当てられない。
どうか駐禁取り締まりが来ませんよに……
俺は切に願いながら、浅いシートに深く身を沈め、瞼を閉じた。
しかし驚いたな。
こういった類の店があることは、基本真面目一辺倒の俺でも知ってはいたけど、まさかこんな近所にあるとは思わなかった。
もっと言うなら、そこに出入りしているのが同僚とはな……
それに思ってた以上に人の出入りがあることにも驚きだ。皆一様にスーツを着たサラリーマン風の男だが、中にはいかにも脂ぎってそうな小太り中年親父もいるんだから、これまた驚くしかない。
つか、特別偏見を持っているわけではないが、あの男達が松下のように、ケバい衣装に身を包み、薄らと髭の生えた顔に衣装に負けないくらいのケバいメイクを施しているかと思うと、正直ゾッとする。
そう思うと、女性的な柔らかさはないし、同じ人種とは思えないくらい濃い顔立ちではあるが、松下のドラァグクイーン姿はそう悪くもなかった。
美人……とはいかないまでも、例えるならばクールビューティといったところだろうか?
ま、どっちにしろ俺の好みのタイプではないけど。
俺が好きなのは、もっとこう智樹みたいな可愛らしいタイプで……って、俺も大概未練がましい男だな。
つか、酒も程よく入ってるからかな、やたらと酔いのが回りが早い。
そんな俺の状況を察したのか、「もう着くから」と松下が前方に向けた視線を変えることなく言った。
そしてその言葉通り、それから五分と経たずに繁華街の中心で車が止まった。
「ちょっと待ってて? あ、寝てても良いけど、駐禁対応だけ宜しくね」
「分かった。なるべく早くな?」
通常よりも三割は増しているだろう睫毛に縁取られた目でバチンと音がするくらいのウインクをされ、適当に返事を返してはみるけど、レンタカーの運転ですら怪しかったのに、左ハンドルの車なんて、とても運転出来る自信ないんだけど……
しかもアルコールも入ってるし、即時移動を命じられた場合、飲酒運転で捕まるのは俺の方だ。そんなことになったら目も当てられない。
どうか駐禁取り締まりが来ませんよに……
俺は切に願いながら、浅いシートに深く身を沈め、瞼を閉じた。
しかし驚いたな。
こういった類の店があることは、基本真面目一辺倒の俺でも知ってはいたけど、まさかこんな近所にあるとは思わなかった。
もっと言うなら、そこに出入りしているのが同僚とはな……
それに思ってた以上に人の出入りがあることにも驚きだ。皆一様にスーツを着たサラリーマン風の男だが、中にはいかにも脂ぎってそうな小太り中年親父もいるんだから、これまた驚くしかない。
つか、特別偏見を持っているわけではないが、あの男達が松下のように、ケバい衣装に身を包み、薄らと髭の生えた顔に衣装に負けないくらいのケバいメイクを施しているかと思うと、正直ゾッとする。
そう思うと、女性的な柔らかさはないし、同じ人種とは思えないくらい濃い顔立ちではあるが、松下のドラァグクイーン姿はそう悪くもなかった。
美人……とはいかないまでも、例えるならばクールビューティといったところだろうか?
ま、どっちにしろ俺の好みのタイプではないけど。
俺が好きなのは、もっとこう智樹みたいな可愛らしいタイプで……って、俺も大概未練がましい男だな。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる