君の声が聞きたくて

誠奈

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第15章  diminish

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 それからはそう会話もすることなく、俺は忘れた頃に襲ってくる途轍もなく強い睡魔と戦いながらも、至極乗り心地の悪い車に揺られていた。


 つか、酒も程よく入ってるからかな、やたらと酔いのが回りが早い。


 そんな俺の状況を察したのか、「もう着くから」と松下が前方に向けた視線を変えることなく言った。

 そしてその言葉通り、それから五分と経たずに繁華街の中心で車が止まった。

 「ちょっと待ってて? あ、寝てても良いけど、駐禁対応だけ宜しくね」
 「分かった。なるべく早くな?」

 通常よりも三割は増しているだろう睫毛に縁取られた目でバチンと音がするくらいのウインクをされ、適当に返事を返してはみるけど、レンタカーの運転ですら怪しかったのに、左ハンドルの車なんて、とても運転出来る自信ないんだけど……

 しかもアルコールも入ってるし、即時移動を命じられた場合、飲酒運転で捕まるのは俺の方だ。そんなことになったら目も当てられない。


 どうか駐禁取り締まりが来ませんよに……


 俺は切に願いながら、浅いシートに深く身を沈め、瞼を閉じた。


 しかし驚いたな。
 こういった類の店があることは、基本真面目一辺倒の俺でも知ってはいたけど、まさかこんな近所にあるとは思わなかった。


 もっと言うなら、そこに出入りしているのが同僚とはな……


 それに思ってた以上に人の出入りがあることにも驚きだ。皆一様にスーツを着たサラリーマン風の男だが、中にはいかにも脂ぎってそうな小太り中年親父もいるんだから、これまた驚くしかない。

 つか、特別偏見を持っているわけではないが、あの男達が松下のように、ケバい衣装に身を包み、薄らと髭の生えた顔に衣装に負けないくらいのケバいメイクを施しているかと思うと、正直ゾッとする。

 そう思うと、女性的な柔らかさはないし、同じ人種とは思えないくらい濃い顔立ちではあるが、松下のドラァグクイーン姿はそう悪くもなかった。

 美人……とはいかないまでも、例えるならばクールビューティといったところだろうか?


 ま、どっちにしろ俺の好みのタイプではないけど。


 俺が好きなのは、もっとこう智樹みたいな可愛らしいタイプで……って、俺も大概未練がましい男だな。
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