144 / 337
第15章 diminish
7
しおりを挟む
俺は全く美味さを感じない、寧ろ苦みしか感じないビールをチビチビと飲みながら、松下の到着を待った。
程なくして、店内に大音量で流れるカラオケを掻き消すように、地鳴りにも似た爆音が聞こえて来て、カラオケに興じる常連達の視線が一気に店舗入り口に集中した。
勿論俺も……
すると今度は、傍らに置いた俺のスマホが突然カウンターの上で暴れ出し、液晶に触れる寸前で『着いた』の一言が画面に表示された。
俺は手早く会計を済ませると、足早に店の外へと飛び出した。
暖簾を潜り、赤提灯の眩しさを視界の端に捉えながら、歩道の向こう側に視線を向けた俺は、目玉が飛び出る勢いで驚いた。
何せそこに停まっていたのは、夜目にも鮮やかなメタリックパープルで、しかも極めて車高の低いスポーツカータイプの車で……
外車ならではの左側の運転席には、これまた煌めくような金髪ロングヘアが、開け放った窓から吹き込む風に靡いている。
まさかとは思うけど……、噓だろ?
俺は恐る恐る車に歩み寄ると、やはり恐る恐る運転席を覗き込んだ。
「あの……、もしかして……なんだけど松下か?」
違うよな……、違うと言ってくれ!
俺は強く強く願った……が、実際返って来た答えは、俺が望んでいた答えとは大きく違っていた。
「そうだけど? つか、早く乗って?」
「お、おぉ……」
一瞬で顔を引き攣らせた俺は、言われるがまま助手席に乗り込んだ、が……
「うおっ……」
スポーツカーならではのシートの低さに、座った瞬間思わず変な声が漏れた。
「シートベルト、ちゃんとしてね?」
「あ、ああ、はい……」
返事はしたものの、なんたってこのタイプの車に乗るのは初めてのことだから、何がどうなってるのか分からず、それでも何とか松下の手を借りることなくシートベルトを締め、フッと息を吐き出した。
「いい?」
「あ、ああ、うん」
何だろう、松下とはそんなに短い付き合いでもないし、なんなら恋愛相談だってする間柄で、親友……と言うわけではないが、極めて親しい関係の筈。
なのに全く別人のように感じるのは、やっぱりこのド派手な出で立ちのせいだろうか……
程なくして、店内に大音量で流れるカラオケを掻き消すように、地鳴りにも似た爆音が聞こえて来て、カラオケに興じる常連達の視線が一気に店舗入り口に集中した。
勿論俺も……
すると今度は、傍らに置いた俺のスマホが突然カウンターの上で暴れ出し、液晶に触れる寸前で『着いた』の一言が画面に表示された。
俺は手早く会計を済ませると、足早に店の外へと飛び出した。
暖簾を潜り、赤提灯の眩しさを視界の端に捉えながら、歩道の向こう側に視線を向けた俺は、目玉が飛び出る勢いで驚いた。
何せそこに停まっていたのは、夜目にも鮮やかなメタリックパープルで、しかも極めて車高の低いスポーツカータイプの車で……
外車ならではの左側の運転席には、これまた煌めくような金髪ロングヘアが、開け放った窓から吹き込む風に靡いている。
まさかとは思うけど……、噓だろ?
俺は恐る恐る車に歩み寄ると、やはり恐る恐る運転席を覗き込んだ。
「あの……、もしかして……なんだけど松下か?」
違うよな……、違うと言ってくれ!
俺は強く強く願った……が、実際返って来た答えは、俺が望んでいた答えとは大きく違っていた。
「そうだけど? つか、早く乗って?」
「お、おぉ……」
一瞬で顔を引き攣らせた俺は、言われるがまま助手席に乗り込んだ、が……
「うおっ……」
スポーツカーならではのシートの低さに、座った瞬間思わず変な声が漏れた。
「シートベルト、ちゃんとしてね?」
「あ、ああ、はい……」
返事はしたものの、なんたってこのタイプの車に乗るのは初めてのことだから、何がどうなってるのか分からず、それでも何とか松下の手を借りることなくシートベルトを締め、フッと息を吐き出した。
「いい?」
「あ、ああ、うん」
何だろう、松下とはそんなに短い付き合いでもないし、なんなら恋愛相談だってする間柄で、親友……と言うわけではないが、極めて親しい関係の筈。
なのに全く別人のように感じるのは、やっぱりこのド派手な出で立ちのせいだろうか……
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる