君の声が聞きたくて

誠奈

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第14章  dolore

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 翔真さんがキスをしてくれる度、翔真さんが「好きだ」と言ってくれる度、いつかこんな日が来るんじゃないか、って心の隅っこでずっと思っていた。
 それは、翔真さんのことを好きになればなる程、どんどん強くなって行って、永遠……なんてモンを信じちゃいないけど、それでも未来を描きたかった。

 だからかな、旅行に誘って貰えたのが嬉しくて、もしかしたら……なんて淡い期待もしたりして、きっと浮かれてたんだと思う。

  これ以上好きになっちゃいけないって、自分自身にずっと言い聞かせて来たつもりだったのに、いつからか翔真さんを好きな気持ちに歯止めが効かなくなってたんだろう。

 どれだけ待っても、待ち合わせ場所に翔真さんが現れないことに不安を感じて、突然降り出した雨が激しさを増す中、俺は翔真さんのマンションへと走った。


 テレビのお天気お姉さんは、晴れるって言ってたのに、天気予報なんて嘘ばっかだ。

 せっかくこの日のために、って何年かぶりに買ったTシャツも濡れちゃったし、サンダルだって……
 こんなことなら、駐輪代をケチらずに自転車で来れば良かった。



 心の中でボヤキながら、それでも翔真さんのことが心配で堪らなかった。

 この間はすっかり潤一さんに騙されちゃったけど、今度は本当に具合が悪くなってるかもしれないし、電話だって何度かけても出ないし、メールだって一向に既読にならないし……

 とにかく翔真さんの顔を見るまでは、不安で不安で仕方なかった。

 だから翔真さんのマンションがオートロックだってことも忘れてて……
 たまたまエントランスの掃除に出てきた管理人のおじさんが俺に気付いて、通用口から入れてくれたから助かったけど……

 俺はおじさんにお礼を伝えると、エレベーターを待つことなく階段を駆け上がり、ずぶ濡れのまま、翔真さんの部屋の前で乱れた息を整えた。


 こんな格好で、しかも息まで乱してたら、翔真さんの性格だから、きっと凄く心配するだろうし、だいたいが俺、心配されるの慣れてないから、どうして良いか戸惑っちゃうから……
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