君の声が聞きたくて

誠奈

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第13章  coda

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 忙しなく上下する智樹の手……
 それに釣られるように、智樹の中を出挿りする俺の指の動きも早くなって……

 『……………っ!』

 智樹の腰がまるで痙攣したかのように震えた瞬間、勢い良く飛び出したモノが智樹の手と腹を濡らした。

 「気持ち良かったんだね?」
 『……うん』
 「そっか。じゃあ……、今度は俺も気持ち良くしてくれる?」

 浅い呼吸を繰り返す智樹の口にキスをすると、コクリと頷いた智樹が俺の肩に腕を回した。そして俺の耳元に寄せた唇が、零れる吐息だけで俺に何かを伝えようとする。

 「ごめん、もう一回」

 俺は智樹が唇を寄せた耳だけに、全神経を集中させた。

 『き…』
 「き?」
 『て…』
 「……て? 」

 俺の耳に感じる熱い吐息は、確かにそう言っていているように聞こえる。

 「《きて》って、そう言ってるの?」

 確かめるように聞いた俺に、俺の肩に顔を埋めたまま智樹が頷く。


 嬉しかった……


 たとえ声にならなかったとしても、それでも一生懸命俺に伝えようとしてくれる智樹が、愛おしくて堪らなかった。

 俺は身体を起こすと、智樹の投げ出された両足を抱え込み、微かな収縮を繰り返す蕾に、自身の先端を宛がった。そして、ゆっくり…時間をかけてゆっくりと、腰を押し進めて行った。
 それでも身体に感じる苦痛は相当なようで、俺の肩に回した智樹の手が、俺の背中に爪を立てた。

 「智樹、お願いだから力抜いて……」


 じゃないと君を傷付けてしまう……


 俺は更に腰を進めながら、痛みから逃れようと首を振る智樹の顔を捉え、苦痛に喘ぐ唇を塞いだ。
 舌を絡め、咥内を蹂躙するように舐め回すと、強張っていた智樹の身体から自然と力が抜けていくのが分かって、俺はその隙を見逃すことなく、腰を一気に押し進めた。

 そうして漸く全てが智樹に包まれた瞬間、俺は自分が泣いていることに気付いた。


 凄く幸せだった。


 でもその幸せは、同時に俺達の終わりを意味していて……


 「ごめん、智樹、愛してる……」



 俺は涙を隠すことなく、おそらく最初で最後になるであろう告白をした。
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