99 / 337
第12章 sostenuto
7
しおりを挟む
「智樹? え、どうしてここに?」
俺の顔を見た翔真さんは心底驚いた様子で、咄嗟に俺が翔真さんの額に手を当てると、今度は不思議そうに首を傾げた。
『熱は?』
「熱? いや、無いけど?」
嘘だろ……、だって潤一さんからのメッセージには確かに熱があるって……
俺は自分のスマホを取り出し、潤一さんからのメッセージを液晶画面上に表示させた。翔真さんはそれを見るなり、深いため息を一つ吐き出すと同時に、肩をガクッと落とした。
「智樹、松下に騙されたんだよ」
『えっ?』
「俺、別に風邪もひいてないし、熱もないから」
『は……?』
頭の上に無数の?マークを浮かべる俺に、翔真さんは苦笑いを浮かべると、「ここじゃなんだから……」と、俺の手を引いた。
翔真さんに手を引かれるまま、翔真さんの部屋へと入った俺は、全く使ってる様子のないキッチンカウンターに、コンビニ袋から大量に買い込んだ物を取り出し並べた。
「ねぇ、それって、もしかして俺のために?」
『うん……』
だって熱で買い物にも行けないと思ったから……
「ありがとう、智樹。でも俺、この通り元気だから」
確かに、今俺の目の前にいる翔真さんは、どこをどう見ても元気そうには見えるけど、それでもまだ潤一さんからのメッセージが気になってしようがない俺は、再度翔真さんの額に手を当てた。
「熱、ないでしょ?」
『うん』
手のひらに感じる、ジンとした熱さもなければ、寧ろ汗をかいているせいか冷たいくらいで……
雅也さんに騙され、今度は潤一さんにまで騙され、二人に対して怒りを感じると同時に、単純過ぎる自分が情けなく思えて来る。
多分凄くムスッとした顔をしていたんだろうな、翔真さんが俺の肩を抱き寄せた。
「そんな顔しないで? 俺が具合悪かったのは事実だし」
『そうなの?』
「まあ、なんつーか、二日酔いでね。あ、でも今はスッカリ治まってるし、飯もちゃんと食えてるから、心配はいらないんだけど」
だよね、そうじゃなかったらハンバーガーなんて、二日酔いの時に食べようとも思わないもん。
『良かった、なんともなくて……』
俺は翔真さんの背中に両腕を回した。
俺の顔を見た翔真さんは心底驚いた様子で、咄嗟に俺が翔真さんの額に手を当てると、今度は不思議そうに首を傾げた。
『熱は?』
「熱? いや、無いけど?」
嘘だろ……、だって潤一さんからのメッセージには確かに熱があるって……
俺は自分のスマホを取り出し、潤一さんからのメッセージを液晶画面上に表示させた。翔真さんはそれを見るなり、深いため息を一つ吐き出すと同時に、肩をガクッと落とした。
「智樹、松下に騙されたんだよ」
『えっ?』
「俺、別に風邪もひいてないし、熱もないから」
『は……?』
頭の上に無数の?マークを浮かべる俺に、翔真さんは苦笑いを浮かべると、「ここじゃなんだから……」と、俺の手を引いた。
翔真さんに手を引かれるまま、翔真さんの部屋へと入った俺は、全く使ってる様子のないキッチンカウンターに、コンビニ袋から大量に買い込んだ物を取り出し並べた。
「ねぇ、それって、もしかして俺のために?」
『うん……』
だって熱で買い物にも行けないと思ったから……
「ありがとう、智樹。でも俺、この通り元気だから」
確かに、今俺の目の前にいる翔真さんは、どこをどう見ても元気そうには見えるけど、それでもまだ潤一さんからのメッセージが気になってしようがない俺は、再度翔真さんの額に手を当てた。
「熱、ないでしょ?」
『うん』
手のひらに感じる、ジンとした熱さもなければ、寧ろ汗をかいているせいか冷たいくらいで……
雅也さんに騙され、今度は潤一さんにまで騙され、二人に対して怒りを感じると同時に、単純過ぎる自分が情けなく思えて来る。
多分凄くムスッとした顔をしていたんだろうな、翔真さんが俺の肩を抱き寄せた。
「そんな顔しないで? 俺が具合悪かったのは事実だし」
『そうなの?』
「まあ、なんつーか、二日酔いでね。あ、でも今はスッカリ治まってるし、飯もちゃんと食えてるから、心配はいらないんだけど」
だよね、そうじゃなかったらハンバーガーなんて、二日酔いの時に食べようとも思わないもん。
『良かった、なんともなくて……』
俺は翔真さんの背中に両腕を回した。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる