63 / 337
第9章 tempo rubato
2
しおりを挟む
定食屋を出た俺は、松下を待つことなく会社に戻ると、契約に必要な書類を専用のファイルに綴じた。書類に不備がないか、何度もファイルを開いては確認を繰り返してから、ブリーフケースに突っ込んだ。
「もお、置いてくとか酷くない?」
俺に置いてきぼりを食らった松下が、不機嫌丸出しの顔と口調で俺のデスクを、トンと叩いた。
原因はお前だし……!
まあ……、あのタイミングで話を切り出した俺にも、若干の責任はあるけど……
「ほら、行くぞ? とっとと行って、さっさと契約済ましちまおうぜ?」
「えっ、ちょっと待ってよ……」
情けない声を上げ、忙しなく支度を始める松下に、社用車のキーを投げる。見事にキャッチした松下は、椅子の背凭れにかけてあったジャケットを引き取ると、早足で俺の後を着いてくる。
けど……
「お前、足、内股になってんぞ」
「え、嘘っ…… ?」
松下は自分では気付いていないようだが、松下は慌てるとつい内股気味になって歩く癖がある。
傍から見れば気にしたことではないんだろうけど、松下が週末ドラァグクイーンをしてることを知っている俺は、どうしても気になってしまう。
「あ、それと今日なんだけど、俺直帰の許可貰ってるから、帰りマンションまで送ってくれるか?」
「いいけど……、桜木だけズルくない?」
シートベルトを締めながら、松下が口を尖らせるけど、松下には社用車の返却と言う重要な役目があるから仕方がない。
それに、
「日頃の行いってヤツじゃないか? 俺、お前と違って真面目だし」
別に松下が仕事に対して不真面目ってわけでもないが、どうしても外見的に真面目そうに見える俺は、意識しているつもりはないが、周りからの評価は割と高い方だ。
「そう言えば来週有給取ってたけど、旅行かなんか?」
「ああ、うん……、ちょっとな?」
「もしかして智樹と……じゃないでしょうね?」
「べ、別にどうだって良いだろ? ほら、ちゃんと前見て運転しろって!」
隠すつもりもなかったけど、あえて言われると動揺してしまう。
ったく、勘の鋭い奴はこれだから困る。
「もお、置いてくとか酷くない?」
俺に置いてきぼりを食らった松下が、不機嫌丸出しの顔と口調で俺のデスクを、トンと叩いた。
原因はお前だし……!
まあ……、あのタイミングで話を切り出した俺にも、若干の責任はあるけど……
「ほら、行くぞ? とっとと行って、さっさと契約済ましちまおうぜ?」
「えっ、ちょっと待ってよ……」
情けない声を上げ、忙しなく支度を始める松下に、社用車のキーを投げる。見事にキャッチした松下は、椅子の背凭れにかけてあったジャケットを引き取ると、早足で俺の後を着いてくる。
けど……
「お前、足、内股になってんぞ」
「え、嘘っ…… ?」
松下は自分では気付いていないようだが、松下は慌てるとつい内股気味になって歩く癖がある。
傍から見れば気にしたことではないんだろうけど、松下が週末ドラァグクイーンをしてることを知っている俺は、どうしても気になってしまう。
「あ、それと今日なんだけど、俺直帰の許可貰ってるから、帰りマンションまで送ってくれるか?」
「いいけど……、桜木だけズルくない?」
シートベルトを締めながら、松下が口を尖らせるけど、松下には社用車の返却と言う重要な役目があるから仕方がない。
それに、
「日頃の行いってヤツじゃないか? 俺、お前と違って真面目だし」
別に松下が仕事に対して不真面目ってわけでもないが、どうしても外見的に真面目そうに見える俺は、意識しているつもりはないが、周りからの評価は割と高い方だ。
「そう言えば来週有給取ってたけど、旅行かなんか?」
「ああ、うん……、ちょっとな?」
「もしかして智樹と……じゃないでしょうね?」
「べ、別にどうだって良いだろ? ほら、ちゃんと前見て運転しろって!」
隠すつもりもなかったけど、あえて言われると動揺してしまう。
ったく、勘の鋭い奴はこれだから困る。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
ポケットのなかの空
三尾
BL
【ある朝、突然、目が見えなくなっていたらどうするだろう?】
大手電機メーカーに勤めるエンジニアの響野(ひびの)は、ある日、原因不明の失明状態で目を覚ました。
取るものも取りあえず向かった病院で、彼は中学時代に同級生だった水元(みずもと)と再会する。
十一年前、響野や友人たちに何も告げることなく転校していった水元は、複雑な家庭の事情を抱えていた。
目の不自由な響野を見かねてサポートを申し出てくれた水元とすごすうちに、友情だけではない感情を抱く響野だが、勇気を出して想いを伝えても「その感情は一時的なもの」と否定されてしまい……?
重い過去を持つ一途な攻め × 不幸に抗(あらが)う男前な受けのお話。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
・性描写のある回には「※」マークが付きます。
・水元視点の番外編もあり。
*-‥-‥-‥-‥-‥-‥-‥-*
※番外編はこちら
『光の部屋、花の下で。』https://www.alphapolis.co.jp/novel/728386436/614893182
しのぶ想いは夏夜にさざめく
叶けい
BL
看護師の片倉瑠維は、心臓外科医の世良貴之に片想い中。
玉砕覚悟で告白し、見事に振られてから一ヶ月。約束したつもりだった花火大会をすっぽかされ内心へこんでいた瑠維の元に、驚きの噂が聞こえてきた。
世良先生が、アメリカ研修に行ってしまう?
その後、ショックを受ける瑠維にまで異動の辞令が。
『……一回しか言わないから、よく聞けよ』
世良先生の哀しい過去と、瑠維への本当の想い。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる