23 / 337
第4章 strascinando
2
しおりを挟む
てもな……つか、俺ちゃんと伝えたよね? 声出ないんだって。
電話番号教えられても、今の俺に電話なんて出来る筈もない。仮に電話出来たとしても、声一つ出せないってのにどうやって喋りゃいいんだか、さっぱり分からない。
なーんだ、その時点で終わってんじゃん……
俺は手の中で名刺をクシャッと丸めると、ゴミ箱に向かって投げ入れた。俺から連絡を取らない限り、俺達は二度と会うこともない筈。だから名刺なんて持ってたって、なんの意味もない。
忘れよう。桜木さんのことは全部……、(多分……だけど)好きだって気持ちも全部纏めて忘れよう。
第一、今の俺に人を好きになる資格なんてないんだし……。
そうだろ、和人?
机の上に飾った和人の写真に問いかけてみるけど、当然だけど返事なんて返って来ない。
俺は手だけを伸ばして、ベッドの上に無造作に丸めてあった和人が愛用していたタオルケットを取ると、和人が良くしていたように、タオルケットを頭からスッポリ被った。
あれ以来ずっと洗濯もしてないからか、和人の匂いがまだしっかり残っている。
いい加減洗わなきゃって思うけど、和人の匂いを消すことで、和人がこの部屋に存在していたこと自体を消してしまうような気がして、結局洗濯出来ずにいる。
タオルケットだけじゃない、シーツだって、枕カバーだって…和人が触れた物は全部……
和人の匂いに包まれ、うとうとしていると、テーブルの上でスマホがブルッと震えた。
続け様に二度、三度と震えるスマホを手に取り、タオルケットにくるまったままで確認する。
表示されていたのは、俺のバイト先の店長で、和人の義理の兄貴で……、和人がずっと憧れ続け、俺と関係を持った後でも、変わらず想いを寄せ続けた相手……相原雅也の名前だった。
俺がこの世で一番信頼出来て、でも一番会いたくない相手。
あの日以来……和人がこの世を去った日以来、こうして一日に何度か連絡をくれるようになった。
恋人……と呼んで良いのかは分かんないけど、和人を亡くしたショックで、声を失った俺を心配してのことなんだろうけど……
電話番号教えられても、今の俺に電話なんて出来る筈もない。仮に電話出来たとしても、声一つ出せないってのにどうやって喋りゃいいんだか、さっぱり分からない。
なーんだ、その時点で終わってんじゃん……
俺は手の中で名刺をクシャッと丸めると、ゴミ箱に向かって投げ入れた。俺から連絡を取らない限り、俺達は二度と会うこともない筈。だから名刺なんて持ってたって、なんの意味もない。
忘れよう。桜木さんのことは全部……、(多分……だけど)好きだって気持ちも全部纏めて忘れよう。
第一、今の俺に人を好きになる資格なんてないんだし……。
そうだろ、和人?
机の上に飾った和人の写真に問いかけてみるけど、当然だけど返事なんて返って来ない。
俺は手だけを伸ばして、ベッドの上に無造作に丸めてあった和人が愛用していたタオルケットを取ると、和人が良くしていたように、タオルケットを頭からスッポリ被った。
あれ以来ずっと洗濯もしてないからか、和人の匂いがまだしっかり残っている。
いい加減洗わなきゃって思うけど、和人の匂いを消すことで、和人がこの部屋に存在していたこと自体を消してしまうような気がして、結局洗濯出来ずにいる。
タオルケットだけじゃない、シーツだって、枕カバーだって…和人が触れた物は全部……
和人の匂いに包まれ、うとうとしていると、テーブルの上でスマホがブルッと震えた。
続け様に二度、三度と震えるスマホを手に取り、タオルケットにくるまったままで確認する。
表示されていたのは、俺のバイト先の店長で、和人の義理の兄貴で……、和人がずっと憧れ続け、俺と関係を持った後でも、変わらず想いを寄せ続けた相手……相原雅也の名前だった。
俺がこの世で一番信頼出来て、でも一番会いたくない相手。
あの日以来……和人がこの世を去った日以来、こうして一日に何度か連絡をくれるようになった。
恋人……と呼んで良いのかは分かんないけど、和人を亡くしたショックで、声を失った俺を心配してのことなんだろうけど……
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる