君の声が聞きたくて

第２章 calando

６

　和人と出会ったのは、高校二年の頃で、たまたま隣の席になったこともあって、俺達は出会ってすぐに意気投合した。
　勿論理由はそれだけじゃない。滅多な事じゃ他人に心を開いたりしない俺が、和人にだけはすんなり心を開けたのには、それなりの理由がある。

　和人を一目見た瞬間、和人が俺と同じ種類の人間だ、ってすぐに気付いた。ただの勘じゃなくて、和人が纏ってる空気感が俺にそう思わせたんだと思う。

　最初に声をかけたのは俺の方。「俺と付き合わない？」って。
　今思えば、和人に特別な感情なんて持ってなかったのに、俺も随分思い切ったことしたなって思うけど、俺達みたいな種類の人間は、そう簡単に同じ種類の人間と出会えるわけじゃないし、仮に出会えたとしても、やっぱお互い性癖ってのは違うモンだから、必ずしも上手く行くとは限らない。


　ま、その辺は普通の……男女のカップルだって同じなんだろうけど、同性ってのは更にハードルが高いっつーか……


　だから尚更、和人が俺を受け入れてくれた時は、驚きもしたけど、嬉しさの方が大きかった。そんな風に誰かに受け入れて貰ったの……、初めてだったから。

　当然、和人もそうだと思ってた……けど違った。

　和人にはずっと前から好きな人がいた。でもその人は和人をそういう風には見ていなくて……っていうか、たとえ血は繋がってなくても、戸籍上は兄弟だから、余計に……なんだろうけど。


　俺はその人の身代わりだったんだ。


　その事を知った時、正直言えば、俺自身そう驚きもしなかったし、裏切られてたってことに腹を立てたりもしなかった。寧ろ、それでもいいって思ってた。


　報われることのない想いを胸に抱えてる程、辛くて苦しいモンはないってことを、俺自身が嫌って程知っていたから。


　俺は、俺を受け入れてくれた和人の、ありのままを受け入れることにした。その選択が間違っていたとは思わない。ただ、結果として和人を……そして俺自身を苦しめる事になるってことを、心のどこかで感じていながら。