君の声が聞きたくて

誠奈

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第2章   calando

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「ごめん」以外の言葉が、どこをどう探しても見つからなくて、はあ……、と深いため息をついた俺の髪を、和人の丸っこい手がクシャリと掻き混ぜる。

「和……人」

 見上げた視線の先で、和人が諦めにも似たような……いや、やっぱり呆れてんのか? クスリと笑った。

「もういいよ。で、ここまではどうやって? バス、終わってる時間でしょ?」
「それは……」

 ショッピングモールからアパートまでは、歩こうと思えば歩けない距離じゃないけど、けっこうな時間がかかるわけで……。かと言って、初対面の人にタクシーで送って貰った……なんて言ったら、和人の事だから、また怒るに決まってる。
 でも下手な言い訳で誤魔化したところで、勘の鋭い和人のことだから簡単に嘘だって見抜くだろう。


 大体、俺、嘘つくの超下手だし……


 どちらにせよ、せっかく冷めた怒りを再燃させるのは避けたい。俺は、ありのままを和人に打ち明けることにした。

「実は、歩いて帰って来た……ってのは嘘で、送って貰ったんだ、タクシーで」
「は?」

 和人の顔が一瞬にして険しくなった。

「送って貰ったって、どこの誰に?」
「えっと、だからその……、初対面の人に。あ、でもすっごい良い人でさ、真面目そうだったし……」

 それは嘘じゃない。
 だってあの人……、雨なんてもう降ってないのに、俺に傘をさしかけてくれたから……

「名前は? 連絡先は? 聞いたんでしょ?」

 心なしか、和人の口調が早くなる。こういう時の和人は、大抵良からぬ想像ばっかしてるんだ。


 例えば、俺の浮気……とか。


 ま、俺に浮気の前科があるから、和人が疑うのは仕方ないことなんだけどさ、でも今日のは違う。

「何も聞いてない。たまたま方向同じだって言うから、一緒にタクシー乗っけて貰っただけだし……」
「本当に? 送って貰っただけ?」
「本当だよ」

 実際には、帰り際に名前を聞いたような気がするけど、それもハッキリ覚えていない以上、聞いてないに等しい。
 ただ、和人が気にするような、やましいことは何一つしてないし、するつもりもない。
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