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第7章

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 「ここは……高校? 俺の通ってた……」

 後部座席の窓を開け、窓の外に顔を出した俺を見て、二人が顔を見合わせる。


 どうしてこんな場所に……?


 何がどうなっているのか分からない俺は、顔を車の中に戻すと、隣に座る雅也の顔を見た。

 「あの……、実は……」
 「ドライブですよ。翔真さんが言ったんですよ? 毎日仕事ばっかりで、たまには息抜きしたい、って。ね、相雅也?」
 「えっ、あ、ああ、うん……」

 何かを言いかけた雅也に、二木が被せるように言って、それに大きく頷く雅也。

 俺が一体いつ……、そう聞き返したかった。

 でも、ここ最近詰め込み過ぎた仕事のせいか、時折記憶が曖昧になることもあることを考えれば、もしかしたら……なんて思いもないわけではない。

 だとしたら、二人の言ってることは、その場凌ぎの“嘘”なんかではないのかもしれない。

 それに何より、雅也は高校時代、唯一目をかけていた後輩で、信頼に値する奴だってことは俺も十分理解している。


きっとそうだ、俺が言い出したんだ……


 「そ、そう……だったな。俺が誘ったんだよな……」
 「そうですよ? 俺なんて、仕事ほっぽり出して来たんですからね?」

 二木が俺に向かって唇を尖らせて見せる。

 「ああ、それは済まなかったね、付き合わせてしまって……」
 「いいえ、とんでもないです。だってほら、先輩の言う事は絶対でしょ? 逆らえませんよ」

 そう言って二木は、おどけた様子で笑った。
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