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第7章

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 軽く身体を揺すられ重い瞼を持ち上げると、醒めきらない視界に写ったのは、まるで見覚えのない景色で……


 ここは……どこだろう……?


 「翔真さん、見て? 懐かしいでしょ?」

 俺の隣に座った男が、仄かに弾んだ声を上げる。

 「変わってないなぁ。あっ、ほら、アソコ、翔真さん良くアソコに立ってさ、俺らにげき飛ばしてたよね」

 狭い車内で、男が俺の前まで身を乗り出して窓の外を指差す。


 あれは……、学校……?


 「あん時の翔真さん、サッカーも超上手くてさ、かっこよかったな……」


 俺が……?
 サッカーなんてしてたんだ……


 「あっ、あれ覚えてる? 翔真さん達の卒業試合のメンバーに俺が選ばれた時さ、超ブーイングの嵐でさ、でもそん時翔真さん言ってくれたんだよね、雅也じゃなきゃダメなんだ、ってさ……」
 「そんなことが……?」

 思わず口をついて出た言葉に、男の顔が少しだけ曇る。そして乗り出した身体をシートに深く沈めると、深い溜息を一つ落とした。

 「やっぱ覚えてないか……」
 「……ごめん」

 独り言のように呟いた言葉に、俺は何故だか謝ることしか出来なくて、俺の手を握っていた男の手から、そっと自分の手を引き抜いた。


 仕方ないじゃないか。
 だって俺にはその時の記憶なんてないし、第一ここがどこなのかも、俺が誰なのかも分からないんだから……

 それなのに……


 「うぁぁぁっーーーーーっ!」

 腹の底から湧き上がってくる怒りにも似た苛立ちに、俺は激しく頭を掻き毟った。
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