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あの日、僕達は目が合った瞬間に始まった。
それは本当に偶然のことで、たまたまバーのカウンターで隣合って座った……、だだそれだけのことで、僕達はお互いのことを何も知らないまま、その日の内にセックスをした。
男同士のセックスなんて初めてのことだったのに……
でも、翔真もそれは多分同じで、僕達は無我夢中で互いを貪り、欲を満たした頃、漸く互いの名前を知った。
それから電話番号を交換し、僕達が別れた頃には、もうすっかり夜が明けようとしていた。
それから暫く、そんな出来事があったことすらすっかり忘れていた時、突然僕の電話が鳴った。
ディスプレイには《翔真》の二文字が並んでいて、僕はすぐにあの時の男だと気付いた。
「久々にしない?」
「いいよ?」
その時交わした会話はそれだけ。
待ち合わせ場所やそれ以外の連絡は、メールだけで取ることにした。
あれから一年近く、ぼくたちの関係は変わってない。
「今の関係、嫌なの?」
「嫌、ってわけじゃない。たださ、どっかで区切り付けないといけないかな、って……」
今日の翔真は珍しく歯切れが悪い。
「終わりにする、ってこと?」
僕はサイドテーブルの上に置いた翔真の煙草を一本を抜き取り、口に咥えライターで火を点けてから、煙を吸い込んだ。
深く吸い込み過ぎたせいなのか、僕のよりも少しキツめの翔真の煙草は、キュッと肺を締め付けた。
「それ俺んじゃん」
いつもは勝手に吸ったって文句なんて言ったことないのに、勝手に吸ったことを咎める翔真の口に、吸いかけの煙草を突っ込む。
「翔真のケチ。いいじゃん、翔真だって僕の吸う時あるし、一本ぐらい……」
「良くない。智樹の物は俺の物だし、俺の物は俺の物だから」
「何それ、誰がそんなこと決めたんだよ……」
「俺に決まってんだろ?」
そう言って、膨れる僕に翔真は煙をフッと吹きかけた。
僕はそれを思いっきり吸い込んでしまって……
「ケホッ、ゴホッ……」
少しだけむせた。
すると、咳き込む僕に、翔真はクスクス笑って、「ゴメンゴメン」って言いながら、灰皿に煙草を揉み消した。
そして、急に真剣な顔をしたかと思うと、真っ直ぐな眼差しで僕を見つめてくるから、僕はその目に不覚にもドキッとしてしまって……
「な、なに?」
思わず声が裏返った。
だってそんな真面目な顔、見たことない……
「ん? ちょっとさ、思ったんだけどさ……」
「たから、何を…?」
もったいぶるなんて、翔真らしくないよ?
「してみる? ……恋人同士のセックス、ってやつ」
《恋人同士のセックス》……その一言に僕の心臓が大きく跳ねた。
ドキドキ、ドキドキ、煩いぐらいに脈打つ鼓動……
「いいよ、してみよっか、恋人同士のセックス、ってやつ?」
翔真の首に腕を巻き付けグイッと翔真の顔を引き寄せた僕は、翔真からのキスを強請るように、そっと目を閉じた。
それは本当に偶然のことで、たまたまバーのカウンターで隣合って座った……、だだそれだけのことで、僕達はお互いのことを何も知らないまま、その日の内にセックスをした。
男同士のセックスなんて初めてのことだったのに……
でも、翔真もそれは多分同じで、僕達は無我夢中で互いを貪り、欲を満たした頃、漸く互いの名前を知った。
それから電話番号を交換し、僕達が別れた頃には、もうすっかり夜が明けようとしていた。
それから暫く、そんな出来事があったことすらすっかり忘れていた時、突然僕の電話が鳴った。
ディスプレイには《翔真》の二文字が並んでいて、僕はすぐにあの時の男だと気付いた。
「久々にしない?」
「いいよ?」
その時交わした会話はそれだけ。
待ち合わせ場所やそれ以外の連絡は、メールだけで取ることにした。
あれから一年近く、ぼくたちの関係は変わってない。
「今の関係、嫌なの?」
「嫌、ってわけじゃない。たださ、どっかで区切り付けないといけないかな、って……」
今日の翔真は珍しく歯切れが悪い。
「終わりにする、ってこと?」
僕はサイドテーブルの上に置いた翔真の煙草を一本を抜き取り、口に咥えライターで火を点けてから、煙を吸い込んだ。
深く吸い込み過ぎたせいなのか、僕のよりも少しキツめの翔真の煙草は、キュッと肺を締め付けた。
「それ俺んじゃん」
いつもは勝手に吸ったって文句なんて言ったことないのに、勝手に吸ったことを咎める翔真の口に、吸いかけの煙草を突っ込む。
「翔真のケチ。いいじゃん、翔真だって僕の吸う時あるし、一本ぐらい……」
「良くない。智樹の物は俺の物だし、俺の物は俺の物だから」
「何それ、誰がそんなこと決めたんだよ……」
「俺に決まってんだろ?」
そう言って、膨れる僕に翔真は煙をフッと吹きかけた。
僕はそれを思いっきり吸い込んでしまって……
「ケホッ、ゴホッ……」
少しだけむせた。
すると、咳き込む僕に、翔真はクスクス笑って、「ゴメンゴメン」って言いながら、灰皿に煙草を揉み消した。
そして、急に真剣な顔をしたかと思うと、真っ直ぐな眼差しで僕を見つめてくるから、僕はその目に不覚にもドキッとしてしまって……
「な、なに?」
思わず声が裏返った。
だってそんな真面目な顔、見たことない……
「ん? ちょっとさ、思ったんだけどさ……」
「たから、何を…?」
もったいぶるなんて、翔真らしくないよ?
「してみる? ……恋人同士のセックス、ってやつ」
《恋人同士のセックス》……その一言に僕の心臓が大きく跳ねた。
ドキドキ、ドキドキ、煩いぐらいに脈打つ鼓動……
「いいよ、してみよっか、恋人同士のセックス、ってやつ?」
翔真の首に腕を巻き付けグイッと翔真の顔を引き寄せた僕は、翔真からのキスを強請るように、そっと目を閉じた。
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