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番外編 ー朝月夜ー 其の一
十
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「覚悟ならあります」
翔真は強い決意を込めた口調で言うと、父ではなく、大田家の当主に向かって頭を下げた。
本音を言えば、蔵の秘密を知るのは怖い。
でも、この蔵の秘密を知ってこそ、大田家の正当な当主の資格があると言うのなら、覚悟を決めよう。
誰が何と言おうとも、この大田家の次期当主は、僕をおいて他にはいないのだから。
「そうか、ならば着いて来るが良い」
頭を下げる翔真に背を向け、大田が蔵の中へと足を踏み入れ、翔真もその後を追った。
日の高い時刻にも拘らず、明かり取りの小窓から差し込む光は殆どなく、吸い込まれそうな闇が広がるそこは、湿り気を帯びた、禍々しくも感じられる淀んだ空気が漂っている。
ギッと軋む床板に下駄底を貼り付けたまま、闇の中で目を凝らす翔真の肩を、大田の無骨が手が揺らし、思わず翔真の身体が跳ね上がった。
「こちらだ、着いて来なさい」
「は、はい……」
緊張からなのか、それともこの場所がそうさせているのか、翔真は何度唾を飲み込んでも、喉の奥がからからに乾いて仕方なかった。
そして、足元さえ見えない闇の中でも、方向を誤ることなく歩を進める父に誘われ、蔵の最奥へと着いた翔真は、そっと瞼を閉じ、耳を澄ました。
翔真は強い決意を込めた口調で言うと、父ではなく、大田家の当主に向かって頭を下げた。
本音を言えば、蔵の秘密を知るのは怖い。
でも、この蔵の秘密を知ってこそ、大田家の正当な当主の資格があると言うのなら、覚悟を決めよう。
誰が何と言おうとも、この大田家の次期当主は、僕をおいて他にはいないのだから。
「そうか、ならば着いて来るが良い」
頭を下げる翔真に背を向け、大田が蔵の中へと足を踏み入れ、翔真もその後を追った。
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「こちらだ、着いて来なさい」
「は、はい……」
緊張からなのか、それともこの場所がそうさせているのか、翔真は何度唾を飲み込んでも、喉の奥がからからに乾いて仕方なかった。
そして、足元さえ見えない闇の中でも、方向を誤ることなく歩を進める父に誘われ、蔵の最奥へと着いた翔真は、そっと瞼を閉じ、耳を澄ました。
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