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第8章 009
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その光景を、暫くの間食い入るように眺めていた翔真だったが、ふと我に返った瞬間、今更ながらの疑問に気付き、首を傾げた。
「え、ちょっと待って? でもさ、最初は普通に話だけで済ませようとしたわけでしょ? だったら別に、誘拐の計画なんて立てる必要なかったんじゃ……」
「そうなんです。単純に痴情のもつれであるなら、何もここまで綿密な計画を立てる必要はなかった筈なんです」
翔真の意見に、黒瀬が尤もだといった様子で頷く。
「でしょ? なのにどうして……」
「簡単なことです」
しきりに首を傾げる翔真に、黒瀬の代わりに答えたのは本木だ。
「恐らくですが、弘行さんを殺害したのは、偶然でも何でもなく、計画的な犯行でしょう。つまり、最初から全ての罪を貴方達二人に被せるつもりだったんではないかと……」
「は、はあ? ……っだよそれ……っ!」
本木の推論に、真っ先に反応したのは、二人がキスをし始めた頃から苛立ちを隠せなくなっていた智樹だった。
智樹はドンと床を踏み鳴らして立ち上がると、今にも殴りかかる勢いで、岸本のくたびれスーツの襟を掴んだ。
智樹の気性の荒さを知っている翔真は、当然のように智樹を止めに入るが、翔真にしたって智樹と心境は同じわけで……
憤る智樹を抑え込みながらも、沸々と湧き上がってくる怒りを、どうにかこうにか鎮めようと必死だった。
「え、ちょっと待って? でもさ、最初は普通に話だけで済ませようとしたわけでしょ? だったら別に、誘拐の計画なんて立てる必要なかったんじゃ……」
「そうなんです。単純に痴情のもつれであるなら、何もここまで綿密な計画を立てる必要はなかった筈なんです」
翔真の意見に、黒瀬が尤もだといった様子で頷く。
「でしょ? なのにどうして……」
「簡単なことです」
しきりに首を傾げる翔真に、黒瀬の代わりに答えたのは本木だ。
「恐らくですが、弘行さんを殺害したのは、偶然でも何でもなく、計画的な犯行でしょう。つまり、最初から全ての罪を貴方達二人に被せるつもりだったんではないかと……」
「は、はあ? ……っだよそれ……っ!」
本木の推論に、真っ先に反応したのは、二人がキスをし始めた頃から苛立ちを隠せなくなっていた智樹だった。
智樹はドンと床を踏み鳴らして立ち上がると、今にも殴りかかる勢いで、岸本のくたびれスーツの襟を掴んだ。
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