125 / 143
第8章 009
14
しおりを挟む
二人に続いてスマホをテーブルに置いたのは、それまでずっと無言を貫き、事の成り行きを見守っていた本木だった。
表情一つ変えることのない本木だが、やはりいわれのない疑いをかけられるのは本意ではないのだろう。
対して、本木同様沈黙を貫く相原は、口をへの字にしたままで、スマホを出そうとする気配すらない。
世界的ホテルチェーンの経営者でもあり、相当に高いプライドを誇示する相原だから、疑いをかけられることはやはり面白くはないのだろう。
尤も、相原自身が関与していなければ、の話ではあるが……
ただ、いくら相手が著名な人間であっても、そこで臆するような黒瀬ではない。
「お言葉ですが社長。関与があろうとなかろうと、ここは素直にお出しになった方が、ご自身のためかと思いますが?」
柔らかな笑顔の反面、強い口調で相原に迫った。
すると相原は、不服そうにフンッと鼻を鳴らしてから……
「分かった。仕方ない……」
渋々ではあるが、ジャケットの胸ポケットから、社長らしく高級ブランドのカバーに包まれた自身のスマホを取り出した。
そして人差し指をピッと立てると、例の如くお決まりのフレーズを声高らかに言い放ち……
「大事な会議を控えているんだ。面倒なことはさっさと済ませてくれ」
苛立った様子で貧乏揺すりを始めた。
表情一つ変えることのない本木だが、やはりいわれのない疑いをかけられるのは本意ではないのだろう。
対して、本木同様沈黙を貫く相原は、口をへの字にしたままで、スマホを出そうとする気配すらない。
世界的ホテルチェーンの経営者でもあり、相当に高いプライドを誇示する相原だから、疑いをかけられることはやはり面白くはないのだろう。
尤も、相原自身が関与していなければ、の話ではあるが……
ただ、いくら相手が著名な人間であっても、そこで臆するような黒瀬ではない。
「お言葉ですが社長。関与があろうとなかろうと、ここは素直にお出しになった方が、ご自身のためかと思いますが?」
柔らかな笑顔の反面、強い口調で相原に迫った。
すると相原は、不服そうにフンッと鼻を鳴らしてから……
「分かった。仕方ない……」
渋々ではあるが、ジャケットの胸ポケットから、社長らしく高級ブランドのカバーに包まれた自身のスマホを取り出した。
そして人差し指をピッと立てると、例の如くお決まりのフレーズを声高らかに言い放ち……
「大事な会議を控えているんだ。面倒なことはさっさと済ませてくれ」
苛立った様子で貧乏揺すりを始めた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】
めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。
真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。
あなたは何章で気づけますか?ーー
舞台はとある田舎町の中学校。
平和だったはずのクラスは
裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。
容疑者はたった7人のクラスメイト。
いじめを生み出す黒幕は誰なのか?
その目的は……?
「2人で犯人を見つけましょう」
そんな提案を持ちかけて来たのは
よりによって1番怪しい転校生。
黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。
それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。
中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる