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第8章  009

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 翔真のプリペイド式携帯電話に電話をかけて来たのは、驚いたことに弁護士の黒瀬だった。

「驚かせてしまったようですね、申し訳ありません」

 黒瀬は電波を二つに折り畳んで閉じると、唇の端だけを軽く持ち上げフッと笑い、平然と謝罪の言葉を口にした。

「あ、でも安心して下さい。この電話は、私の物ではないので」
「え……?」
「実はこの電話は、彼……つまり、このご遺体の彼が持っていた物でして……」
「どういうことだ……」

 黒瀬の言ってる意味が全く理解出来ない智樹ではない。ただ、状況を把握するのには、若干の時間が必要だった。

「説明しますので、あちらでお話しましょうか」

 明らかに困惑の色を隠せない智樹を思ってか、黒瀬が智樹をソファに座るように促した。

「お、おぅ……」

 どうにも思考が纏まらない智樹は、それ以上の言葉を発することなく、ソファに腰を下ろした。

「ね、ねぇ、ちょっとどういうことなの?」

 当然、智樹以上に状況の飲み込めていない翔真が智樹の腕を掴んで説明を求めるが、智樹自身がまだ困惑の最中にいるのだから、どうにも答えようがない。

「うっせーな、ちょっと黙ってろよ……」

 智樹は翔真に冷たく言い放つと、ソファの上に胡座をかき、両手で頭を抱え込んだ。
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