113 / 143
第8章 009
2
しおりを挟む
翔真のプリペイド式携帯電話に電話をかけて来たのは、驚いたことに弁護士の黒瀬だった。
「驚かせてしまったようですね、申し訳ありません」
黒瀬は電波を二つに折り畳んで閉じると、唇の端だけを軽く持ち上げフッと笑い、平然と謝罪の言葉を口にした。
「あ、でも安心して下さい。この電話は、私の物ではないので」
「え……?」
「実はこの電話は、彼……つまり、このご遺体の彼が持っていた物でして……」
「どういうことだ……」
黒瀬の言ってる意味が全く理解出来ない智樹ではない。ただ、状況を把握するのには、若干の時間が必要だった。
「説明しますので、あちらでお話しましょうか」
明らかに困惑の色を隠せない智樹を思ってか、黒瀬が智樹をソファに座るように促した。
「お、おぅ……」
どうにも思考が纏まらない智樹は、それ以上の言葉を発することなく、ソファに腰を下ろした。
「ね、ねぇ、ちょっとどういうことなの?」
当然、智樹以上に状況の飲み込めていない翔真が智樹の腕を掴んで説明を求めるが、智樹自身がまだ困惑の最中にいるのだから、どうにも答えようがない。
「うっせーな、ちょっと黙ってろよ……」
智樹は翔真に冷たく言い放つと、ソファの上に胡座をかき、両手で頭を抱え込んだ。
「驚かせてしまったようですね、申し訳ありません」
黒瀬は電波を二つに折り畳んで閉じると、唇の端だけを軽く持ち上げフッと笑い、平然と謝罪の言葉を口にした。
「あ、でも安心して下さい。この電話は、私の物ではないので」
「え……?」
「実はこの電話は、彼……つまり、このご遺体の彼が持っていた物でして……」
「どういうことだ……」
黒瀬の言ってる意味が全く理解出来ない智樹ではない。ただ、状況を把握するのには、若干の時間が必要だった。
「説明しますので、あちらでお話しましょうか」
明らかに困惑の色を隠せない智樹を思ってか、黒瀬が智樹をソファに座るように促した。
「お、おぅ……」
どうにも思考が纏まらない智樹は、それ以上の言葉を発することなく、ソファに腰を下ろした。
「ね、ねぇ、ちょっとどういうことなの?」
当然、智樹以上に状況の飲み込めていない翔真が智樹の腕を掴んで説明を求めるが、智樹自身がまだ困惑の最中にいるのだから、どうにも答えようがない。
「うっせーな、ちょっと黙ってろよ……」
智樹は翔真に冷たく言い放つと、ソファの上に胡座をかき、両手で頭を抱え込んだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
双子協奏曲
渋川宙
ミステリー
物理学者の友部龍翔と天文学者の若宮天翔。二人は双子なのだが、つい最近までその事実を知らなかった。
そんな微妙な距離感の双子兄弟の周囲で問題発生!
しかも弟の天翔は事件に巻き込まれ――
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)
想妖匣-ソウヨウハコ-
桜桃-サクランボ-
キャラ文芸
深い闇が広がる林の奥には、"ハコ"を持った者しか辿り着けない、古びた小屋がある。
そこには、紳士的な男性、筺鍵明人《きょうがいあきと》が依頼人として来る人を待ち続けていた。
「貴方の匣、開けてみませんか?」
匣とは何か、開けた先に何が待ち受けているのか。
「俺に記憶の為に、お前の"ハコ"を頂くぞ」
※小説家になろう・エブリスタ・カクヨムでも連載しております
その人事には理由がある
凪子
ミステリー
門倉(かどくら)千春(ちはる)は、この春大学を卒業したばかりの社会人一年生。新卒で入社した会社はインテリアを専門に扱う商社で、研修を終えて配属されたのは人事課だった。
そこには社長の私生児、日野(ひの)多々良(たたら)が所属していた。
社長の息子という気楽な立場のせいか、仕事をさぼりがちな多々良のお守りにうんざりする千春。
そんなある日、人事課長の朝木静から特命が与えられる。
その任務とは、『先輩女性社員にセクハラを受けたという男性社員に関する事実調査』で……!?
しっかり女子×お気楽男子の織りなす、人事系ミステリー!
順風満帆の過ち
RIKAO
ミステリー
エリート街道を歩く僕の身に起きた想定外のトラブル。こんなことに巻き込まれる予定じゃなかったのに―――
*この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる