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第7章  008

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「せーの……」

 翔真の掛け声で、二人がかりで弘行の遺体をひっくり返す。

 すると……

「あれ……?」

 腕の部分に触れた翔真が、弘行の遺体をしげしげと眺めて首を傾げる。

「どうかしましたか?」
「いや……、なんかさ、硬いっていうかさ……、人形みたくなってない?」
「ああ、それはおそらく死後硬直が始まっているからでしょう」

 顔色一つ変えることなくサラッと言い放つ黒瀬だが、聞かされた翔真はそれどころじゃない。一気に顔を青くすると、弘行の遺体からパッと手を離した。

「え、えっと、死後硬直って、ドラマとかで良く聞くアレのこと?」
「そうです。ドラマなどでは、死後硬直がどれくらい始まっているかで、凡その死亡推定時刻を割り出されることも多いですね」
「へ、へぇ……、そうなんだ……」

 淡々とした口調で語る黒瀬の横で、翔真は顔を引き攣らせて苦笑する……が、何かを思い出したようにパンと手を叩くと、人差し指を黒瀬に向けた。

「なんかさ、探してるんじゃなかったっけ?」
「ああ、そうでしたね」

 黒瀬は小さく肩を竦めると、弘行の腰の辺り……、スラックスの尻ポケットの上をスッと手で撫でた。

「やはりここでしたか……」
「え、なになに?」

 覗き込んだ翔真の目の前で、黒瀬はポケットに手を突っ込むと、何かを取り出した。
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