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第6章 007
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翔真からゴム手袋を受け取った黒瀬は、「ありがとうございます」と礼儀正しく礼を言うと、その端正な顔に柔らかな微笑を浮かべた。
そしてスーツにはまるで不釣り合いなゴム手袋を両手に嵌め、再びパーティションの向こう側へと向かった。
「俺ちょっと見てくる」
「勝手にしろ」
翔真は智樹をその場に残し、黒瀬の後を追った。
「あのぉ……、見てても良いですか?」
パーティションの隙間から顔だけを出し、恐る恐る声をかける翔真に、黒瀬は振り返ることもなく「どうぞ」とだけ言うと、サイドテーブルに置かれた電気スタンドを手に取り、コードの部分を弘行の首元に寄せた。
「詳しく調べてみないと分かりませんが、恐らく凶器はコレでしょう」
「え、弁護士さんてすげぇんだな、そんなことまで分かるなんて」
大袈裟なくらい褒め称える翔真に、黒瀬は特に反応を見せることもなく、電気スタンドを元あった場所に置き、今度は弘行の着ていたシャツの裾をそっと捲った。
「これも鑑識の判断にはなるんですが、この遺体は死後数時間しか経っていないようなので、死亡推定時効は恐らく今朝……、それも早朝と言ったところでしょうか……」
「ふぇ~、やっぱすげぇわ、弁護士さんて…… 」
目の前で、ドラマさながらに次々推察して行く黒瀬に、翔真はただただ感嘆の溜息を漏らした。
そしてスーツにはまるで不釣り合いなゴム手袋を両手に嵌め、再びパーティションの向こう側へと向かった。
「俺ちょっと見てくる」
「勝手にしろ」
翔真は智樹をその場に残し、黒瀬の後を追った。
「あのぉ……、見てても良いですか?」
パーティションの隙間から顔だけを出し、恐る恐る声をかける翔真に、黒瀬は振り返ることもなく「どうぞ」とだけ言うと、サイドテーブルに置かれた電気スタンドを手に取り、コードの部分を弘行の首元に寄せた。
「詳しく調べてみないと分かりませんが、恐らく凶器はコレでしょう」
「え、弁護士さんてすげぇんだな、そんなことまで分かるなんて」
大袈裟なくらい褒め称える翔真に、黒瀬は特に反応を見せることもなく、電気スタンドを元あった場所に置き、今度は弘行の着ていたシャツの裾をそっと捲った。
「これも鑑識の判断にはなるんですが、この遺体は死後数時間しか経っていないようなので、死亡推定時効は恐らく今朝……、それも早朝と言ったところでしょうか……」
「ふぇ~、やっぱすげぇわ、弁護士さんて…… 」
目の前で、ドラマさながらに次々推察して行く黒瀬に、翔真はただただ感嘆の溜息を漏らした。
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