78 / 143
第6章 007
5
しおりを挟む
「……っだよ、いきな……、んぐっ……!」
バスルームに入るなり腕を掴んだ翔真の手を払った智樹の口を、咄嗟に翔真の手が塞ぎ、立てた人差し指を口元に宛てた。
そして徐にシャワーコックを捻ると、シャワーヘッドを空のバスタブへと向けた。
メインルーム程広くはない浴室内は、すぐに湯煙で満ち、翔真は漸く智樹の口を塞いでいた手を緩めた。
「なんなんだよ、一体……」
余程きつく押さえつけられていたのか、智樹は口元を腕で拭うと、呼吸同様、鼻息を荒くした。
「ごめんごめん。っていうかさ、このタイミングで弁護士とかさ、ヤバくない?」
それも、相当なやり手だと称される程の弁護士となれば、尚のことだ。
「このままだと、俺達……。ねぇ、どうしよう……」
湯煙立ち込める中、ウロウロと歩き回り、頭を抱えてしゃがみ込んだ翔真を見下ろし、智樹は小さく息を吐き出すと、翔真の目線の高さまで膝を折り、青いツナギの襟元を掴んだ。
「どうしようじゃねぇよ。昔っからそうだ……、お前に付き合うとろくな事がねぇ……」
報酬に目が眩んだことも忘れて随分な言いようだが、実際そうなんだから仕方がない。
翔真は、下を向いたままで小さく「ごめん……」と呟くと、キャップを脱いだせいで落ちた前髪を掻き上げた。
バスルームに入るなり腕を掴んだ翔真の手を払った智樹の口を、咄嗟に翔真の手が塞ぎ、立てた人差し指を口元に宛てた。
そして徐にシャワーコックを捻ると、シャワーヘッドを空のバスタブへと向けた。
メインルーム程広くはない浴室内は、すぐに湯煙で満ち、翔真は漸く智樹の口を塞いでいた手を緩めた。
「なんなんだよ、一体……」
余程きつく押さえつけられていたのか、智樹は口元を腕で拭うと、呼吸同様、鼻息を荒くした。
「ごめんごめん。っていうかさ、このタイミングで弁護士とかさ、ヤバくない?」
それも、相当なやり手だと称される程の弁護士となれば、尚のことだ。
「このままだと、俺達……。ねぇ、どうしよう……」
湯煙立ち込める中、ウロウロと歩き回り、頭を抱えてしゃがみ込んだ翔真を見下ろし、智樹は小さく息を吐き出すと、翔真の目線の高さまで膝を折り、青いツナギの襟元を掴んだ。
「どうしようじゃねぇよ。昔っからそうだ……、お前に付き合うとろくな事がねぇ……」
報酬に目が眩んだことも忘れて随分な言いようだが、実際そうなんだから仕方がない。
翔真は、下を向いたままで小さく「ごめん……」と呟くと、キャップを脱いだせいで落ちた前髪を掻き上げた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
コドク 〜ミドウとクロ〜
藤井ことなり
ミステリー
刑事課黒田班に配属されて数ヶ月経ったある日、マキこと牧里子巡査は[ミドウ案件]という言葉を知る。
それはTMS探偵事務所のミドウこと、西御堂あずらが関係する事件のことだった。
ミドウはマキの上司であるクロこと黒田誠悟とは元同僚で上司と部下の関係。
警察を辞め探偵になったミドウは事件を掘り起こして、あとは警察に任せるという厄介な人物となっていた。
事件で関わってしまったマキは、その後お目付け役としてミドウと行動を共にする[ミドウ番]となってしまい、黒田班として刑事でありながらミドウのパートナーとして事件に関わっていく。
【毎日更新】教室崩壊カメレオン【他サイトにてカテゴリー2位獲得作品】
めんつゆ
ミステリー
ーー「それ」がわかった時、物語はひっくり返る……。
真実に近づく為の伏線が張り巡らされています。
あなたは何章で気づけますか?ーー
舞台はとある田舎町の中学校。
平和だったはずのクラスは
裏サイトの「なりすまし」によって支配されていた。
容疑者はたった7人のクラスメイト。
いじめを生み出す黒幕は誰なのか?
その目的は……?
「2人で犯人を見つけましょう」
そんな提案を持ちかけて来たのは
よりによって1番怪しい転校生。
黒幕を追う中で明らかになる、クラスメイトの過去と罪。
それぞれのトラウマは交差し、思いもよらぬ「真相」に繋がっていく……。
中学生たちの繊細で歪な人間関係を描く青春ミステリー。
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる