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第5章 006
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岸本の存在に気付いた鍵のプロと言われた男は、やはり表情一つ変えることなく、まるで糸で吊られたかのようにスッと立ち上がると、指の先で銀縁メガネをクイッと持ち上げた。
「申し遅れました。総合セキュリティの本木です」
表情と同じく、感情の読み取れない声色でそれだけを言うと、何を思ったのか今度は弘行の隣に横たわった。
「あ、あの……、一体何を……?」
本木の、一見不可解ともとれる行動に、岸本が首を傾げる。
そして、その様子を遠巻きに見ていた翔真と智樹も、同様に首を傾げた。
ところが、本木はそれをまったく気にした様子もなく、バスルームへと移動すると、バスタブのヘリに爪先立ちをし、通気口のカバーを外した。
不安定な場所にも関わらず、一切バランスを崩すことなく立つ本木の姿は、さながらサーカス団やどこぞの国の雑技団の曲芸を見ているようで……
す、すごい……!
岸本は拍手を送りたい気分になったが、一瞬キラリと光った眼鏡の奥になんとも言えない冷酷さを感じた岸本は、静かに元いた場所に戻り、素知らぬフリで鼻に指を突っ込んだ。
そしてすっかり冷めてしまった薄いコーヒーを一気に飲み干すと、自分が誘拐された身であることも忘れてしまったのか、ものの数秒も経たないうちに呑気に居眠りを始めた。
「申し遅れました。総合セキュリティの本木です」
表情と同じく、感情の読み取れない声色でそれだけを言うと、何を思ったのか今度は弘行の隣に横たわった。
「あ、あの……、一体何を……?」
本木の、一見不可解ともとれる行動に、岸本が首を傾げる。
そして、その様子を遠巻きに見ていた翔真と智樹も、同様に首を傾げた。
ところが、本木はそれをまったく気にした様子もなく、バスルームへと移動すると、バスタブのヘリに爪先立ちをし、通気口のカバーを外した。
不安定な場所にも関わらず、一切バランスを崩すことなく立つ本木の姿は、さながらサーカス団やどこぞの国の雑技団の曲芸を見ているようで……
す、すごい……!
岸本は拍手を送りたい気分になったが、一瞬キラリと光った眼鏡の奥になんとも言えない冷酷さを感じた岸本は、静かに元いた場所に戻り、素知らぬフリで鼻に指を突っ込んだ。
そしてすっかり冷めてしまった薄いコーヒーを一気に飲み干すと、自分が誘拐された身であることも忘れてしまったのか、ものの数秒も経たないうちに呑気に居眠りを始めた。
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