65 / 143
第5章 006
1
しおりを挟む
相原が呼び付けた男が、実にキビキビとした動きで部屋の中を歩き回る。
表情一つ変えることなく、まるでロボットのように動く男は、弘行の死体が横たわるベッドの前でピタリとその動きを止めると、徐に床に這いつくばりベッドの下に手を突っ込んだ。
「あ、あの……、あの人は一体……」
謎の男を不審に思った翔真が、相原に男の正体を問う。
すると相原は、綺麗に折り畳んだティッシュで、見るからに高価そうな腕時計の盤面を拭くと、それを翔真に差し出した。
「あ、あの……」
「何をボケっとしている。ゴミはゴミ箱に捨てるのが普通だろ? 清掃員のくせにそんなことも知らんとは、実に情けない」
「い、いや、それくらいのことは……」
翔真も相原程ではないが、それなりに年は重ねて来ているわけで、ゴミはゴミ箱に捨てることくらい、当然知っている。
内心不貞腐れつつもm翔真は相原の手からティッシュを受け取ると、キャビネットの横に置かれたゴミ箱の中に捨てた。
そして再度、「あの人は……」と相原に問いかけた。
「彼は我がホテルが専属契約しているセキュリティ会社の人間で、言うなれば鍵のプロだ」
「なるほど、それで……」
漸く合点がいったのか、岸本はポンと手を叩くと、ベッドの周りを這っては、何かを探しているような素振りをする男の、丁度進行方向にしゃがみ込んだ。
表情一つ変えることなく、まるでロボットのように動く男は、弘行の死体が横たわるベッドの前でピタリとその動きを止めると、徐に床に這いつくばりベッドの下に手を突っ込んだ。
「あ、あの……、あの人は一体……」
謎の男を不審に思った翔真が、相原に男の正体を問う。
すると相原は、綺麗に折り畳んだティッシュで、見るからに高価そうな腕時計の盤面を拭くと、それを翔真に差し出した。
「あ、あの……」
「何をボケっとしている。ゴミはゴミ箱に捨てるのが普通だろ? 清掃員のくせにそんなことも知らんとは、実に情けない」
「い、いや、それくらいのことは……」
翔真も相原程ではないが、それなりに年は重ねて来ているわけで、ゴミはゴミ箱に捨てることくらい、当然知っている。
内心不貞腐れつつもm翔真は相原の手からティッシュを受け取ると、キャビネットの横に置かれたゴミ箱の中に捨てた。
そして再度、「あの人は……」と相原に問いかけた。
「彼は我がホテルが専属契約しているセキュリティ会社の人間で、言うなれば鍵のプロだ」
「なるほど、それで……」
漸く合点がいったのか、岸本はポンと手を叩くと、ベッドの周りを這っては、何かを探しているような素振りをする男の、丁度進行方向にしゃがみ込んだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クアドロフォニアは突然に
七星満実
ミステリー
過疎化の進む山奥の小さな集落、忍足(おしたり)村。
廃校寸前の地元中学校に通う有沢祐樹は、卒業を間近に控え、県を出るか、県に留まるか、同級生たちと同じく進路に迷っていた。
そんな時、東京から忍足中学へ転入生がやってくる。
どうしてこの時期に?そんな疑問をよそにやってきた彼は、祐樹達が想像していた東京人とは似ても似つかない、不気味な風貌の少年だった。
時を同じくして、耳を疑うニュースが忍足村に飛び込んでくる。そしてこの事をきっかけにして、かつてない凄惨な事件が次々と巻き起こり、忍足の村民達を恐怖と絶望に陥れるのであった。
自分たちの生まれ育った村で起こる数々の恐ろしく残忍な事件に対し、祐樹達は知恵を絞って懸命に立ち向かおうとするが、禁忌とされていた忍足村の過去を偶然知ってしまったことで、事件は思いもよらぬ展開を見せ始める……。
青春と戦慄が交錯する、プライマリーユースサスペンス。
どうぞ、ご期待ください。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
そして、海へ
ふるは ゆう
ミステリー
小さな島で女子高生の溺死体が発見される。親友の死の原因を調べるため礼香は同級生の幸二と共に捜査を始めるのだが……事件は意外な方向へ進んでいく。第21回「北区内田康夫ミステリー文学賞」応募作品です!
恥ずかしいので観ないで下さい。
恐山にゃる
ミステリー
15秒で読める140文字以内のショートショート作品です。(夫には内緒で書いています。)
恥ずかしいので観ないで下さい。
生きる事は恥を晒す事。
作品には仕掛けを施してある物もございます。
でももし火遊び感覚で観てしまったのなら・・・感想を下さい。
それはそれで喜びます。
いや凄く嬉しい。小躍りして喜びます。
どちらかの作品が貴方の目に留まったなら幸いです。恐山にゃる。
大江戸あやかし絵巻 ~一寸先は黄泉の国~
坂本 光陽
ミステリー
サブとトクという二人の少年には、人並み外れた特技があった。めっぽう絵がうまいのである。
のんびり屋のサブは、見た者にあっと言わせる絵を描きたい。聡明なトクは、美しさを極めた絵を描きたい。
二人は子供ながらに、それぞれの夢を抱いていた。そんな彼らをあたたかく見守る浪人が一人。
彼の名は桐生希之介(まれのすけ)。あやかしと縁の深い男だった。
後宮で立派な継母になるために
絹乃
キャラ文芸
母である皇后を喪った4歳の蒼海(ツァンハイ)皇女。未来視のできる皇女の養育者は見つからない。妃嬪の一人である玲華(リンホア)は皇女の継母となることを誓う。しかし玲華の兄が不穏な動きをする。そして玲華の元にやって来たのは、侍女に扮した麗しの青年、凌星(リンシー)だった。凌星は皇子であり、未来を語る蒼海の監視と玲華の兄の様子を探るために派遣された。玲華が得意の側寫術(プロファイリング)を駆使し、娘や凌星と共に兄の陰謀を阻止する継母後宮ミステリー。※表紙は、てんぱる様のフリー素材をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる