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第5章  006

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 相原が呼び付けた男が、実にキビキビとした動きで部屋の中を歩き回る。

 表情一つ変えることなく、まるでロボットのように動く男は、弘行の死体が横たわるベッドの前でピタリとその動きを止めると、徐に床に這いつくばりベッドの下に手を突っ込んだ。

「あ、あの……、あの人は一体……」

 謎の男を不審に思った翔真が、相原に男の正体を問う。
 すると相原は、綺麗に折り畳んだティッシュで、見るからに高価そうな腕時計の盤面を拭くと、それを翔真に差し出した。

「あ、あの……」
「何をボケっとしている。ゴミはゴミ箱に捨てるのが普通だろ? 清掃員のくせにそんなことも知らんとは、実に情けない」
「い、いや、それくらいのことは……」

 翔真も相原程ではないが、それなりに年は重ねて来ているわけで、ゴミはゴミ箱に捨てることくらい、当然知っている。
 内心不貞腐れつつもm翔真は相原の手からティッシュを受け取ると、キャビネットの横に置かれたゴミ箱の中に捨てた。

 そして再度、「あの人は……」と相原に問いかけた。

「彼は我がホテルが専属契約しているセキュリティ会社の人間で、言うなれば鍵のプロだ」
「なるほど、それで……」

 漸く合点がいったのか、岸本はポンと手を叩くと、ベッドの周りを這っては、何かを探しているような素振りをする男の、丁度進行方向にしゃがみ込んだ。
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