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第4章 005
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「お、お待たせしまし……た……」
岸本が相原の前にカップを置き、淹れ立てのコーヒーを波々と注ぎ、おそらくは量を間違ったのだろう、コーヒーサーバーに残ったコーヒーを、人数分の湯飲み茶碗に注いだ。
「お二人もどうぞ……」
「あ、ああ、悪いな……」
自分を誘拐した相手に、ついでとは言えコーヒーを振る舞う岸本に、翔真と智樹は呆気に取られていたが、ここに着いてからというもの、水一滴も口にしていなかったからか、喉はカラカラに乾いていて……
翔真はテーブルに置かれた湯飲み茶碗を手に取ると、まるで煽るかのようにコーヒーを喉に流し込み、それを見ていた智樹も手に取った湯飲み茶碗に口を付けると、一気に飲み干した。
そして空になった湯飲み茶碗をテーブルに置くと一言、
「ぬるっ!」
「まずっ!」
示し合わせたように顔を歪ませた。
「あ、あれ……? 美味しくなかったですか……、すいません。俺、コーヒーは買った事しかないんで…… 」
初めて淹れたコーヒーが不評だったことが相当ショックだったのだろう、申し訳なさそうに俯く岸本。
すると、優雅な仕草でカップを持ち上げた相原が、フーフーと息を吹きかけながら、コーヒーをズスッと啜って一言、「美味い……」と満足気に呟いた。
岸本が相原の前にカップを置き、淹れ立てのコーヒーを波々と注ぎ、おそらくは量を間違ったのだろう、コーヒーサーバーに残ったコーヒーを、人数分の湯飲み茶碗に注いだ。
「お二人もどうぞ……」
「あ、ああ、悪いな……」
自分を誘拐した相手に、ついでとは言えコーヒーを振る舞う岸本に、翔真と智樹は呆気に取られていたが、ここに着いてからというもの、水一滴も口にしていなかったからか、喉はカラカラに乾いていて……
翔真はテーブルに置かれた湯飲み茶碗を手に取ると、まるで煽るかのようにコーヒーを喉に流し込み、それを見ていた智樹も手に取った湯飲み茶碗に口を付けると、一気に飲み干した。
そして空になった湯飲み茶碗をテーブルに置くと一言、
「ぬるっ!」
「まずっ!」
示し合わせたように顔を歪ませた。
「あ、あれ……? 美味しくなかったですか……、すいません。俺、コーヒーは買った事しかないんで…… 」
初めて淹れたコーヒーが不評だったことが相当ショックだったのだろう、申し訳なさそうに俯く岸本。
すると、優雅な仕草でカップを持ち上げた相原が、フーフーと息を吹きかけながら、コーヒーをズスッと啜って一言、「美味い……」と満足気に呟いた。
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