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第4章 005
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「おい、君、コーヒーを淹れてくれたまえ」
ポケットチーフを抜き取り、そう大して汚れてもいない革靴の爪先を拭きなが相原が言う……が、相原の言う〝君〟が誰を指しているのか分からず……、翔真は首を傾げ、智樹は怪訝そうに眉を寄せた。
そもそも、コーヒーを淹れろと言われても、二人共清掃員の格好はしていても、従業員でも何でもないのだから、何をどうしたら良いのか分からないのも当然の話だ。
「え……っと、俺達は……」
戸惑いを隠せない二人は、お互いに顔を見合わせた……が、
「そこの君、早くしたまえ」
再度言い放った相原の視線は、ピクリともしない二人を通り越し、パーティションの後ろから、のそのそと這って出てきた岸本に向けられた。
「え、俺……ですか?」
「君以外に誰がいる。君も相原の社員ならば、社長にコーヒーの一つくらい出すのが、社員としての責務だろう」
「は、はあ……」
どうやら相原は、岸本を相原の社員だと思い込んでいるようだった。
岸本は部屋の中をキョロキョロと見回すと、簡易キッチンが備え付けられているのに気付き、至極のろのろとした動きでそこに向かった。
その後を、翔真も着いて行く。
とんだアクシデントがあったものの、もしここで岸本に逃げられたらという思いがあった……のかもしれない。
ポケットチーフを抜き取り、そう大して汚れてもいない革靴の爪先を拭きなが相原が言う……が、相原の言う〝君〟が誰を指しているのか分からず……、翔真は首を傾げ、智樹は怪訝そうに眉を寄せた。
そもそも、コーヒーを淹れろと言われても、二人共清掃員の格好はしていても、従業員でも何でもないのだから、何をどうしたら良いのか分からないのも当然の話だ。
「え……っと、俺達は……」
戸惑いを隠せない二人は、お互いに顔を見合わせた……が、
「そこの君、早くしたまえ」
再度言い放った相原の視線は、ピクリともしない二人を通り越し、パーティションの後ろから、のそのそと這って出てきた岸本に向けられた。
「え、俺……ですか?」
「君以外に誰がいる。君も相原の社員ならば、社長にコーヒーの一つくらい出すのが、社員としての責務だろう」
「は、はあ……」
どうやら相原は、岸本を相原の社員だと思い込んでいるようだった。
岸本は部屋の中をキョロキョロと見回すと、簡易キッチンが備え付けられているのに気付き、至極のろのろとした動きでそこに向かった。
その後を、翔真も着いて行く。
とんだアクシデントがあったものの、もしここで岸本に逃げられたらという思いがあった……のかもしれない。
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