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第3章 004
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漸く止まったと思われた岸本の涙が、再び頬を伝った。
岸本はそれをサイズの合っていないジャケットの袖で乱暴に拭うと、鼻をズッと吸ってから息を整えるようにスッと空気を吸い込んだ。
「実は、彼は弘行と言って、俺の……その……恋人って言うか、だったって言うか……」
泣いたせいなのか、それとも別の理由があってなのか、岸本の顔が赤くなる。
「へ、へえ……、恋人……って言うか、だったってことは、元彼……ってことなの?」
「まあ……、そう言うことになんじゃねぇか?」
そう言うことだろ、と問われて岸本はコクリと頷くと、一瞬視線をベッドで横たわる死体に向けた。
「弘行とは先月別れたんです」
「そ、そうなんだ? 理由は? 何で別れちゃったの?」
「そ、それはその……」
それまで饒舌……とはいかないまでも、どうにかこうにか言葉を絞り出していた岸本だったが、余程訊かれたくない事情でもあるのか、弘行と別れた理由を問われた途端口を噤み、下を向いてしまう。
当然、瞬時に察した智樹に強烈な肘鉄を食らった翔真だが、当の本人は全く悪びれた様子もなく、
「あ、もしかして弘行さん……だったっけ、に新しい恋人でも出来ちゃったとか?」
興味津々に身を乗り出した
岸本はそれをサイズの合っていないジャケットの袖で乱暴に拭うと、鼻をズッと吸ってから息を整えるようにスッと空気を吸い込んだ。
「実は、彼は弘行と言って、俺の……その……恋人って言うか、だったって言うか……」
泣いたせいなのか、それとも別の理由があってなのか、岸本の顔が赤くなる。
「へ、へえ……、恋人……って言うか、だったってことは、元彼……ってことなの?」
「まあ……、そう言うことになんじゃねぇか?」
そう言うことだろ、と問われて岸本はコクリと頷くと、一瞬視線をベッドで横たわる死体に向けた。
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当然、瞬時に察した智樹に強烈な肘鉄を食らった翔真だが、当の本人は全く悪びれた様子もなく、
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