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第3章 004
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再び明かりの灯った部屋で、二人は立派なソファーがあるにも関わらず、床に胡座をかいて座った。
お互い考えることは一つだから、特に言葉を交わすことはない。
ただ両腕を組み、しきりに首を傾げては、何の解決策を見いだせないまま、何度も深い溜息を落とした。
「なあ……、腹減らない?」
「は、はあ? お前この状況で良く……」
そんな事が言えるな……、と言いたいところだが、智樹は後に続く言葉を飲み込んだ。
智樹自身、寝坊したおかげで、用意してあった昼食ろくに摂らずに家を飛び出したことを、少なからず後悔していたから。
「あ、そうだ、この際だからルームサービスとか頼んじゃう?」
「は? お前何言ってんの?」
「だってさ、どうせこの部屋のチャージ料は依頼人持ちなんだし、ちょっとくらいは贅沢したって良くない?」
冗談とはとても思えないような口調の翔真に、智樹は強烈なパンチを一つ二つお見舞いしてやりたい気分になったが、腕っ節では翔真には敵わないことを思い出して、智樹は握りかけた拳を解いた。
その時、「うぅ……っ……」と小さな呻き声が聞こえ、二人はほぼ同時にパーティションの向こう側を振り返った。
そして、続けて聞こえて来た悲鳴とも叫びとも区別のつかない声に、二人はゴクリと息をのみ、顔を引き攣らせた。
お互い考えることは一つだから、特に言葉を交わすことはない。
ただ両腕を組み、しきりに首を傾げては、何の解決策を見いだせないまま、何度も深い溜息を落とした。
「なあ……、腹減らない?」
「は、はあ? お前この状況で良く……」
そんな事が言えるな……、と言いたいところだが、智樹は後に続く言葉を飲み込んだ。
智樹自身、寝坊したおかげで、用意してあった昼食ろくに摂らずに家を飛び出したことを、少なからず後悔していたから。
「あ、そうだ、この際だからルームサービスとか頼んじゃう?」
「は? お前何言ってんの?」
「だってさ、どうせこの部屋のチャージ料は依頼人持ちなんだし、ちょっとくらいは贅沢したって良くない?」
冗談とはとても思えないような口調の翔真に、智樹は強烈なパンチを一つ二つお見舞いしてやりたい気分になったが、腕っ節では翔真には敵わないことを思い出して、智樹は握りかけた拳を解いた。
その時、「うぅ……っ……」と小さな呻き声が聞こえ、二人はほぼ同時にパーティションの向こう側を振り返った。
そして、続けて聞こえて来た悲鳴とも叫びとも区別のつかない声に、二人はゴクリと息をのみ、顔を引き攣らせた。
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