ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第３章 ００３

３

　智樹の手を借り、岸本を開け放ったハッチバックから車の仲に引き摺り込み、もしもの場合に備えて、岸本の両手両足をビニールテープで括った。

　ついでに、移動中に大声を出されては敵わないと、口にも猿ぐつわを噛ませた上から、手足を括ったのと同じビニールテープを貼り付けた。

　そして、意識を失くした岸本を寝袋の中に押し込み、頭までしっかりとチャックを閉めると、二人はほぼ同時と言っても良いタイミングで額の汗を拭った。

「ここまでは何とか完璧……かな」
「ああ……、そうだな」
「しっかし、人一人攫うのって、案外疲れるんだな？」

　当然のことを、さも今更気付いたかのように口にする翔真に、智樹はまるで小馬鹿にしたように鼻で笑うと、軽い身のこなしで助手席へと移り、翔真よりも一足先にシートベルトを締めた。

　それを見てか、翔真も慌てたように開け放ったハッチバックから飛び降りると、辺りを気にする様子もなく運転席へと乗り込んだ。

　エンジンはかけたままにしてあったから、サイドブレーキを下ろし、ギアのチェンジだけをして車を発進させる。

　一つミッションを無事にクリアしたことで、心做しか気が楽になったのだろう、翔真は鼻歌を歌い始め、智樹は翔真の鼻歌に合わせ膝を指で叩いた。