ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第２章 ００２

３

　程なくして翔真の元へとやって来た智樹は、周囲に視線を配らせながら、運転席のドアを叩いた。

　翔真は運転席のドアを開けると、サングラス越しに智樹の格好を見て吹き出した。

「お前、昔っからそういうの良く似合うよね」
「うっせー。好きでこんな格好してるわけじゃねぇし……」

　智樹が不貞腐れるのも無理はない。

　何せ翔真がこの日のためにと用意したのは、メイド服さながらのフリルの着いたエプロンドレスで……
　しかもスカート丈も膝上5センチと来たら、智樹でなくても身に着けるのは遠慮したくなる代物だ。

「つか、さっさとロッカーの鍵寄越せ」

　智樹は辺りを気にしながら翔真に向かって手を差し出した。

「ああ、うん、ちょっと待ってよ？」

　言われて翔真は、ジーンズの尻ポケットからくしゃくしゃになった茶封筒を取り出すと、それをそのまま智樹の手にポンと置いた。

　封筒の中には、駅構内にあるコインロッカーの鍵が、ご丁寧にロッカーの場所まで記したメモまで添えて入っている。

「で？　ロッカーの中には何が？」

　実際に依頼主とやり取りをしているのは翔真一人だから、智樹は詳しいことはあまり聞かされていない。

「えっと……、ホテルのカードキーとか言ってたけど……」

「はあ？　そんなモンのためにわざわざコインロッカー使うとか、意味分かんねぇ……」

　智樹が首を傾げるのももっともだ。
　カードキーなら、プリペイド式携帯と同梱してしまえば、無駄な金を使う必要も、手間だって省けるのだから。