5 / 143
第1章 001
5
しおりを挟む
翔真は、自身の携帯電話に送られてきた差出人不明のメールを、携帯電話の画面に表示させて智樹に見せた。
元々口下手な翔真だから、口で説明するよりは、その方が正確且つ確実に伝わると判断してのことだった。
「どう……思う?」
メールに目を通し終えた智樹から、携帯電話を受け取ると同時に、横にいる智樹の顔を覗き込んだ。
智樹はついさっき煙草を揉み消したばかりなのに、次の新しい煙草に火をつけようとしていて……
翔真はピッと智樹の口から煙草を奪い取り、それを二つに折った。
そしてもう一度、
「で、智樹はどう思う?」
同じ質問を繰り返した。
すると智樹は、煙草を奪われたことに怒るわけでもなく、もともとの猫背を更に丸くして、小さく息を吐き出した。
「どうもこうも……、それぜってぇヤバイ話だろ……」
「やっぱりそう思う……?」
「ったりめーだ。んな誘拐って……、怪し過ぎんだろ……」
実際、智樹の言う事はもっともだと、翔真自身も思っていた。
仮に冗談だったとしても、《誘拐》なんて言葉が出てくること自体、穏やかではない。
智樹が、訝しげに眉をひそめるのも当然だ。
ところが、
「でもさ、報酬100万円で、しかも前払いってさ、美味しい話だと思わない?」
閉じたメールを再度開き、目の前に差し出された瞬間、智樹の目の色が変わった。
元々口下手な翔真だから、口で説明するよりは、その方が正確且つ確実に伝わると判断してのことだった。
「どう……思う?」
メールに目を通し終えた智樹から、携帯電話を受け取ると同時に、横にいる智樹の顔を覗き込んだ。
智樹はついさっき煙草を揉み消したばかりなのに、次の新しい煙草に火をつけようとしていて……
翔真はピッと智樹の口から煙草を奪い取り、それを二つに折った。
そしてもう一度、
「で、智樹はどう思う?」
同じ質問を繰り返した。
すると智樹は、煙草を奪われたことに怒るわけでもなく、もともとの猫背を更に丸くして、小さく息を吐き出した。
「どうもこうも……、それぜってぇヤバイ話だろ……」
「やっぱりそう思う……?」
「ったりめーだ。んな誘拐って……、怪し過ぎんだろ……」
実際、智樹の言う事はもっともだと、翔真自身も思っていた。
仮に冗談だったとしても、《誘拐》なんて言葉が出てくること自体、穏やかではない。
智樹が、訝しげに眉をひそめるのも当然だ。
ところが、
「でもさ、報酬100万円で、しかも前払いってさ、美味しい話だと思わない?」
閉じたメールを再度開き、目の前に差し出された瞬間、智樹の目の色が変わった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クアドロフォニアは突然に
七星満実
ミステリー
過疎化の進む山奥の小さな集落、忍足(おしたり)村。
廃校寸前の地元中学校に通う有沢祐樹は、卒業を間近に控え、県を出るか、県に留まるか、同級生たちと同じく進路に迷っていた。
そんな時、東京から忍足中学へ転入生がやってくる。
どうしてこの時期に?そんな疑問をよそにやってきた彼は、祐樹達が想像していた東京人とは似ても似つかない、不気味な風貌の少年だった。
時を同じくして、耳を疑うニュースが忍足村に飛び込んでくる。そしてこの事をきっかけにして、かつてない凄惨な事件が次々と巻き起こり、忍足の村民達を恐怖と絶望に陥れるのであった。
自分たちの生まれ育った村で起こる数々の恐ろしく残忍な事件に対し、祐樹達は知恵を絞って懸命に立ち向かおうとするが、禁忌とされていた忍足村の過去を偶然知ってしまったことで、事件は思いもよらぬ展開を見せ始める……。
青春と戦慄が交錯する、プライマリーユースサスペンス。
どうぞ、ご期待ください。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
臆病者は首を吊る
ジェロニモ
ミステリー
学校中が文化祭準備に活気づく中、とある理由から夜の学校へやってきた文芸部一年の森辺誠一(もりべ せいいち)、琴原栞(ことはら しおり)は、この学校で広く知られる怪異、首吊り少女を目撃することとなった。文芸部を舞台に、首吊り少女の謎を追う学園ミステリー。
それでもミステリと言うナガレ
崎田毅駿
ミステリー
流連也《ながれれんや》は子供の頃に憧れた名探偵を目指し、開業する。だが、たいした実績も知名度もなく、警察に伝がある訳でもない彼の所に依頼はゼロ。二ヶ月ほどしてようやく届いた依頼は家出人捜し。実際には徘徊老人を見付けることだった。憧れ、脳裏に描いた名探偵像とはだいぶ違うけれども、流は真摯に当たり、依頼を解決。それと同時に、あることを知って、ますます名探偵への憧憬を強くする。
他人からすればミステリではないこともあるかもしれない。けれども、“僕”流にとってはそれでもミステリなんだ――本作は、そんなお話の集まり。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
「蒼緋蔵家の番犬 1~エージェントナンバーフォー~」
百門一新
ミステリー
雪弥は、自身も知らない「蒼緋蔵家」の特殊性により、驚異的な戦闘能力を持っていた。正妻の子ではない彼は家族とは距離を置き、国家特殊機動部隊総本部のエージェント【ナンバー4】として活動している。
彼はある日「高校三年生として」学園への潜入調査を命令される。24歳の自分が未成年に……頭を抱える彼に追い打ちをかけるように、美貌の仏頂面な兄が「副当主」にすると案を出したと新たな実家問題も浮上し――!?
日本人なのに、青い目。灰色かかった髪――彼の「爪」はあらゆるもの、そして怪異さえも切り裂いた。
『蒼緋蔵家の番犬』
彼の知らないところで『エージェントナンバー4』ではなく、その実家の奇妙なキーワードが、彼自身の秘密と共に、雪弥と、雪弥の大切な家族も巻き込んでいく――。
※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる