H・I・M・E ーactressー

誠奈

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第32章  scene6:僕はHIME…

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 スタッフさんが用意してくれた真っ白なショートブーツを履いた僕の手に、花冠と同じ色のお花を束ねたブーケが渡される。


 派手さはないし、割と小ぶりの物だけど、凄く凄く可愛い♡


 「さ、これで良いわ。急ぎましょ?」

 言いながら、斗子さんが長く伸びた後ろの裾を持ち上げる。

 そしてスタッフさんの案内でフィッティングルームを出た僕は、フカフカのカーペットが敷かれた廊下を、ゆっくり……一歩一歩足元を確かめながら、歩を進めた。

 すると、お客さん……なのかな、すれ違いざまに僕をチラッと見て、「まあ可愛い」ってため息を漏らした。


 ふふ、可愛いって言われちゃった♪


 嬉しくなった僕は、本当ならスキップでもしたいところだけど、それだと斗子さんが困ってしまうだろうからと、スキップは我慢することにして、こっそりガッツポーズをした。

 そうしてスタッフさんやお客さんに見送られ、車に乗り込んだ僕と斗子さんは、ちょっとした違和感に気づく。

 「えと……、ねぇ、これは何……?」

 確かさっき車を降りた時には。こんなカーテン無かった筈だけど?

 前も後ろも、それから横も……、まるで僕達の視界を遮るように引かれた真っ黒なカーテンは、縁がしっかりガムテープで止められていて、真っ暗ってわけじゃないんだけど、外の景色は一切見えない。

 なんなら、長井さんや城田さんの姿すら、僕達の場所からは見えない。


 だからかな……、急に不安になって来て……

 「ねぇ、斗子さん、僕、怖い……」

 僕が抱きつくと、斗子さんは大きな手で僕の肩を抱いてくれて、手も握ってくれた。

 「大丈夫よ、安心して?」って言いながら。 

 そしたらさ、不思議と不安が消えて、怖さも無くなって……

 僕は斗子さんの肩にコツンと頭を乗せると、静かに瞼を閉じた。

 緊張し過ぎて、あまり良く眠れなかったせいか、今頃になって眠たくなっちゃったみたいだ。
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