H･I･M･E ーactressー

第28章 日常13：夢なら醒めないで…

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　僕はゆっくり翔くんをベッドに押し倒した。

　翔真くんがとっても困った顔をしているのは分かったけど、もう止められなかった。

　「嫌だったら、僕のこと蹴り飛ばしちゃっても良いからね？」

　無理強いだけはしたくなかったから、しっかり前置きだけしてから、翔真くんの腰の上に跨り、涙で濡れた頬にそっと唇を寄せた。

　汗なのかな、それとも涙なのかな、翔真くんの頬はちょっぴりしょっぱくて……

　唇に触れたらどんな味がするんだろうって思ってしまう。


　だってさ、さっき翔真くんがしてくれたキスでは、触れたことは分かっても、感触も味も、何にも分かんなかったんだもん。

　だからね、ちゃんと翔真くんの味を確かめたくて、頬に触れてた唇を移動させるんだけど……


　ちょっと待って？
　この流れだと、僕が翔真くんを……ってことになる？

　え、ちょっと待って？

　僕、されたことは……ＡＶなんて出てたくらいだから、経験はそれなりに豊富な方だと思うけど、逆って……したことないかも……ってゆーか、ないけど？

　あ、でもそれで言ったら翔真くんも同じか。

　だって翔真くん、童貞なんだもんね？

　ってことは、ここはやっぱり（逆しかないけど）経験である僕が、童貞の翔真くんをリードするべき……なんだよね？

　え～、どうしよう……、困る。
　僕、翔真くんを抱くなんて、自信ないよ……

　で、でも、せっかくのチャンスなんだもん。
　ここで引き下がるわけにはいかないよね？

　だって僕は、元ゲイビ界のスーパー男の娘アイドルＨＩＭＥだもん♪


　僕はこっそり自分に気合いを入れると、ちょっぴり鼻息を荒くして困惑顔キープ状態の翔真くんに覆い被さった。

　唇をムゥ～ッと突き出し、翔真くんの唇にブチューッと押し付ける。


　ってゆーか僕、こんなにキス下手っぴだったっけ？

　おかしいな……、そんな筈ないんだけど、どうしてだろ……
　キスもろくに出来ないなんて……、呆れられちゃわない？

　ガッカリさせちゃったらどうしよう……