H･I･M･E ーactressー

第28章 日常13：夢なら醒めないで…

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　どうせキスしてくれるなら、もっとちゃんとした……、ドラマとかじゃないけどさ、それなりに雰囲気もあってさ、そうゆーのが良かったな……


　なんて、今更言わない。

　だって、事故みたいなキスだけど、キスには違いないもん。

　でもさ、キスするくらいなら、どうしてあの時翔真くんは逃げ出したのか……って思っちゃうのは、間違ってるのかな？


　翔真くんにキスされた喜びと、同時に湧き上がってくる疑問に、僕は思わず頭を抱えた。

　でも考えれば考えるほど、余計に頭が混乱してきそうで……

　「あ、あの……さ、一つ聞いても良い？」

　思い切って切り出した僕に、翔真くんは真っ赤な顔で首を傾げた。

　「どうしてあの時……」
　「あの時……って？」

　僕が言い終えるのを待たずに、翔真くんが更に首を傾げる。


　もぉ……、せっかちなんだから……


　「だから……、チャペルでの撮影が終わった後、どうして逃げたの？」

　正直、僕もハッキリ覚えてるわけじゃない。

　でも、あの時翔真くんは確かに、僕が振り向いた瞬間、凄く悲しそうな顔をしてて、それから僕の目の前から逃げ出したんだ。

　僕はその理由がずっと気になっていた。

　もし、あの時翔真くんの中で僕への気持ちが少しでもあったのなら、逃げ出したりしない筈でしょ？

　「あの時はその……、なんつーか……、悔しくてさ……」
　「悔し……い？」

　それは僕が思ってもいなかった答えで……
　僕が聞き返すと、翔くんはコクリと頷いて、ちょっぴり自嘲気味に笑った。

　「俺さ、潤一兄ぃからＨＩＭＥちゃんの最後の撮影があるって聞いて、凄く寂しくてさ……」

　ファン心理ってやつなのかな……
　僕がもし逆の立場なら、同じように寂しく感じたのかもしれない。

　「だからどうしても言いたかったんだよね、直接お疲れさまって……。でもさ、言えなかった」
　「どう……して？」

　僕の問いかけに、翔真くんのお顔が苦しげに歪んで、ゆっくりと……そして静かに首を横に振った、