H・I・M・E ーactressー

誠奈

文字の大きさ
上 下
484 / 688
第27章  日常12:僕、さよなら…、だよ

しおりを挟む
 とは言え、思いがけない大金が入って来たからって、そういつまでもプー太郎さんのままでいるわけにはいかない。

 僕は新しい生活にも慣れて来た頃、新しいバイトを探すべく、求人情報誌を何冊か買い込み、テーブルの上に広げた。

 ページを捲り、僕にも出来そうな職種の求人にチェックを入れて行く……けど、なかなか思うようなバイトはなくて……

 「どうしよっかな……」

 両腕を枕に、ラグの上にゴロンと仰向けになった。

 その時、ソファーの上に置きっぱなしになっていたスマホが、繰り返し震えた。


 電……話?
 誰から……?


 滅多にかかってくることのない電話に、若干の不安を感じながらも、仰向けのままでスマホに手を伸ばした。
 そして、スマホの画面に表示された名前を見た瞬間、僕はテーブルを蹴り倒す勢いで飛び起きた。


 だって何年ぶり?
 高校を卒業してからだから、かれこれ五年?

 その間、一度だって連絡をくれたことも、僕から連絡をしたこともなかったのに、急にどうして……?


 僕は恐る恐るスマホの通話ボタンをタップすると、スマホを耳に当てた。

 「もし……もし……?」

 声が掠れて、スマホを持つ手が震えた。

それでも僕は、持ち前の演技力(?)で務めて普通を装い、電話の向こうにいる人に話しかけた。

 「ど、どうしたの、急に電話なんて……」った。

 でも返事がすぐに返ってくることはなくて……

 きっと僕と同じように、電話口の向こうであんまり久しぶりだから緊張してるんだろうと、勝手にだけど想像していた。

 だからちょっとくらい沈黙が続いたって、別に不思議なことはないんだって……

 でもそうじゃなかった。

 「お父さんがね……」

 耳に当てたスマホから聞こえて来た声は、酷く……僕以上に酷く掠れていて、泣いているようにも聞こえた。

 「と、父ちゃんが……どうしたの?」

 僕が聞き返しても、返事すら返せない様子で……

 「えと、あの、今から行くから……」

 家の鍵と、財布をボケットに捩じ込み、玄関のドアを開けた所で、僕はふと気付く。


 この時間じゃ、バスだって電車だって走ってないじゃんか……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

処理中です...