H･I･M･E ーactressー

第27章 日常12：僕、さよなら…、だよ

２

　引っ越し当日、荷物なんてそんなに無いからって断ったにも関わらず、僕一人じゃ頼りないからって、和人と相原さんがお手伝いに来てくれた。

　しかも、松下さんまで……

　本音を言えば、和人や相原さんはともかくとして、松下さんにはあまり会いたくなかった。

　だってさ、松下さんの顔見ちゃうとさ、嫌でも翔真くんのことを思い出してしちゃうんだもん。

　ただ、僕に松下さんの申し出を断るだけの勇気はなく……。

　気づけば、性格的に几帳面なのもあって、仕事は凄く丁寧で、手先の不器用さを除けば、力仕事は完璧な相原さんより、ずっと助けになっていた。　

　なんたって相原さんときたら……

　「ごめーん、またやっちゃった……」

　ほんの数時間の間に、既に食器を三つ程ゴミ箱行きにしてるんだもん。

　ただでさえ数少ない食器なのに、このままだとお茶碗一つも無くなってしまうんじゃないかって、心配になっちゃう。

　結局、相原さんに割れ物は任せられないと判断した和人に、

　
「雅也はそこやんなくて良いから、そこのダンボールとか車積んで来てよ」

　別の仕事を与えられ、渋々ダンボールを抱えて部屋の外へと出て行った。

　「デカいのがいなくなったら、ちょっと部屋広くなったんじゃない？」

　和人は笑うけど、僕はなんだか申し訳なくて……


　せっかくお手伝いに来てくれたのに、邪魔者みたいにしちゃうのって、やっぱ失礼じゃん？

　ま、和の言うことも分からなくもないけどね？

　勿論、ダンボールをいくつか運び出したせいでもあるけど、相原さんがいなくなっただけで、部屋の中が広々したような気は確かにする。

　身動きが取りやすくなったおかげで、仕事もはかどるしね♪

　「あ、そう言えば松下さんて今日誕生日じゃなかったでした？」

　和人が、ＨＩＭＥ専用グッズが入ったクリアボックスを整理していた手を止め、カーテンを外していた松下さんを見上げた。

　「ああ、良く覚えてたな」

　嘘……
　お誕生日なのに、わざわざ僕のためにお手伝いを？


　「ごめんなさい、せっかくの誕生日なのに……。予定とかあったんじゃ……」

　顔が広いので有名な松下さんのことだから、当然約束でもしてるんだと思った。