H・I・M・E ーactressー

誠奈

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第27章  日常12:僕、さよなら…、だよ

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 翔真くんへの気持ちにバイバイをするって決めてから、一週間が経った。

 でも、一度は好きになった人をそう簡単に忘れることなんて、やっぱり難しくて……

 僕は一日中、特に何をするでもなく、ボケーッとして時間を過ごしていた。
 バイトにも行く気になれず、ずっと休みのままでは申し訳ないから、と辞めてしまったし…

 店長さんは、忙しい時とか、たまにでも良いから手伝ってくれないかと言ってくれたけど、それも丁重にお断りした。

 これまでだって撮影の都合やらで、散々わがまま言って来たし、これ以上は迷惑かけらんないと思って。

 それに、僕自身最近になって気付いたことなんだけど、僕の貯金通帳には、僕が想像していた以上の金額が記入されていて……

 勿論、僕がHIMEとして頑張って来た成果ではあるんだけど、当面は遊んでても暮らせるだけのお金もあることは分かったし……

 だったらこの際……と、僕は引っ越しを決めた。

 約五年……かな、住み慣れた場所から離れるのはちょっぴり寂しくもあったけど、思い出がいっぱい詰まった場所に居続けるよりも、思い切って離れてしまった方がスッキリさっぱり忘れられるかと思ったんだ。

 建物は古いしさ、部屋だって狭いし、良いとこ無しの部屋だったけど、それなりに住心地は良かったし、そんなに多くはないけど、翔真くんとの記憶も残ってるから……

 だから翔真くんを忘れるためには、そこから離れるのが一番なんだ……って、その時の僕は思っていた。

 和人は反対したけどね?

 諦めるな、って。
 本当に良いのか、って。

 何度も……、いい加減僕が「しつこいよ」って言うまで、何度も確認を繰り返した。

 でも僕の決心は変わることはなかった。

 最終的に和人を泣かせちゃったんだけど、それでも僕は自分の意志を貫き通した。


 だってそうでもしないと、僕の心にはずっと翔真くんが住み続けることになって、一歩も前に進めそうになかったんだもん。

 僕が前に進むには、どうしても必要な事だったんだ。
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