H・I・M・E ーactressー

誠奈

文字の大きさ
上 下
476 / 688
第26章  日常11:さよなら…言わなきゃだめ?

17

しおりを挟む
 「え、智…樹? やだ、ちょっと、泣かないでよ……」


 え……?


 和人に言われて、僕は自分の頬を手で撫でた。


 あ……、ほんと……だ。


 「泣くほど好きだったのか? 翔真のことが……」
 「分かんない……、分かんないけど……」

 翔真くんのことは確かに好きだった。
 最後の撮影が終わったら、告白だってしようと思っていたことも事実。

 その翔真くんに会えないから……、翔真くんが本当は全部知ってて、でもそれをずっと隠してたから……、だから悲しいんじゃない。


 勿論、それだって悲しいんだけどさ……


 でもだからって涙が出るんじゃない。

 なのにどうしてだか涙が溢れて止まらないよ。

 「ねぇ、従兄弟なんでしょ? 元々は、アンタが大事な資料机に置いとくから…… 、だからこんなことになっちゃったんじゃん……。何とかしてよ……」

 和人が松下さんに掴みかかる勢いで言うのを、相原さんが必死で制止する。

 「何とかって言われても…….、俺も連絡が取れない状態だし、家にも帰って無いみたいだし……」

 どうしようもないんだよ、と松下さんが肩を落とす。

 「ご両親は? 流石に何か知ってんじゃないの? ほら、行先とかさ……」


 無駄だよ。
 翔真くんのご両親は出張で海外に行ってるって言ってたもん。

 だからご両親に聞いたところで、きっと無駄に終わるもん。

 
 「もういいよ……」


 もう終わりで良い。


 「何言ってんの?」
 「もう会わない方が良いんだ」
 「でも……」

 その方がお互いのためにも、それから僕自身のためにも良いと思う。

 だからもう良いんだ。

 「終わりにするから……」


 翔真くんにも、翔真くんを好きになった僕の気持ちにも、ちゃんとバイバイするから……

 ちょっと……かなりかもしれないけど、時間かかるかもだけど、いつかちゃんと……
 翔真くんを好きだったことが、いつか良い思い出に変えられるように、ちゃんとバイバイするから、だから……


 「ねぇ、もうちょっとだけ泣いても良い?」


 泣きたいだけ泣いたら、その後はちゃんと笑うから…… 

 だから今だけ、ごめんね……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

少年達は毛布の中で一晩放置される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...