H･I･M･E ーactressー

第26章 日常11：さよなら…言わなきゃだめ？

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　「それは……だな、たまたま翔真が家に来るタイミングがあって、たまたまその時机の上に台本が置きっぱなしになってて……｣
　「それを桜木くんが見ちゃった……と、そういうことか……｣

　松下さんが言い終える前に、和人が先回りして結論を言ってしまう。

　やっぱり和人は頭の回転が早い。

　「じゃあ、わざと……じゃないんですよ……ね？」
　「当たり前だ。仕事の話を、しかも㊙扱いの仕事の話をだな、いくら従兄弟だからってそうベラベラと喋るわけないだろ……」
　「確かに……」

　疑われたのが不満だったのか、唇を尖らせて抗議する松下さんに、和人と相原さんが両腕を組んで頷く。


　そうだよね……、僕が逆の立場でもきっと周りにベラベラは……、（絶対って言いたいけど……）多分しないだろうし……


　「なんか……、ごめんなさい……」

　僕は結果的に疑うような格好になってしまったことを、松下さんに頭を下げて謝った。

　すると松下さんはクスリと笑って、「別にかまわないよ」と言ってから、冷蔵庫から出してから暫く放置していたおかげで、すっかり常温に近い温度になったペットボトルの水を、グビッと喉を鳴らして飲んだ。

　「それで、あの……、今翔真くんは…」
　「どうしてるか、ってこと？」
　「はい。なんか、バイトも辞めちゃったみたいだし……」

　そう……
　翔真くんがどんな経緯で撮影のことを知ったのか……、それも確かに気にはなっていたことだけど、それ以上に気になっていたのは、あの日からの翔真くんのこと。

　「連絡は？　してみなかったのか？」

　聞かれて僕は首を横に振った。


　だって、それが出来たら、今こんなに悩んでないもん。


　「翔真からの連絡も？」
　「何も……」

　僕が答えると、松下さんは広げていた足を組み、ついでに両腕を組んでから、考え込む素振りを見せた。

　そして、「実は……」と組んでいた腕を解くと同時に、少しだけ身を乗り出し、眼光鋭く（僕にはそう見えたの）僕を真っ直ぐに見据えた。

　ヤバい……、なんだかドキドキする。


　あ、変な意味じゃなくてね？