H･I･M･E ーactressー

第26章 日常11：さよなら…言わなきゃだめ？

９

　僕は小さく息を吐き出すと、ごちゃごちゃになった頭の中を整理しながら、一つ一つの答えを纏めて行く。

　「なんか、上手く言えないんだけど……」

　でも結局何一つ上手く纏めることが出来なくて……

　それでも、一つだけ……

　「あの日、翔真くんが現場に来ること、二人は知ってたの？」

　ずっと気になっていて、でもずっと聞けずにいたことを口にした。

　すると二人は一瞬顔を見合わせてから、僕に向かって首を横に振った。

　「知らなかった……ってこと？」
　うん、少なくとも私たちは知らなかった。だから智樹が倒れてるの見た時凄く驚いたし、どうしてそうなったのかも分からなかった」
　「そう……なんだ？」


　正直、あの時のことは僕も良く……ってゆーか、全く覚えていない。

　ただ、僕が意識を飛ばす直前のことは、はっきりとではないし、凄くぼんやりとしているけど、多少は覚えている。


　「俺も、和人があんまり血相変えて俺のこと呼ぶから、何事かと思ったら智樹が倒れてて……、うわ言のように桜木くんの名前呼んでてさ……、それで何となく知ったって言うか……」


　やっぱりそうなんだ……？

　でも良かった、二人が何も知らないでいてくれて。

　だってさ、もし二人が翔真くんが現場に来ること知ってて、その上で僕に黙っていたんだとしら、それはそれで寂し過ぎるもん。

　勿論、二人が僕に隠し事をするような人とは、僕も思ってないけど……


　「でも、じゃあ誰が……？ 」

　僕があの日あの場所で撮影することは、関係者以外知らない筈なのに、和人と相原さんじゃなかったら一体誰が……

　「俺、思うんだけどさ……」

　相原さんが腕を組んで、うーんと唸りながら首を傾げる。

　「一人しかいなくない？　あの日、あの場所で撮影があることも、それが智樹がＨＩＭＥとしての最後の撮影になることも、それから桜木くんのことも知ってたのって、どう考えたって一人しか思いつかないんだけど……」

　どう思う？、と和人に同意を求める相原さんに、

　「そう……だよね、一人しかいないよね…… 」

　和人も同じように腕を組んで、納得したように頷いた。