H･I･M･E ーactressー

第26章 日常11：さよなら…言わなきゃだめ？

８

　丁度お昼を少し過ぎた頃だったから、お昼ご飯代わりに社長さんから貰ったハンバーガーを三人でパクついた。

　でもさ、いくら三人って言っても、僕と和人はお互い少食な方だから、二個が限度で……

　痩せの大食いで有名な相原さんだって、四つ目を完食した時点で根を上げてしまった。

　でも袋の中にはまだ十個以上は残っていて……

　「ねぇ、晩ご飯にどう？」

　一応提案してみたけど、呆気なく却下された。

　「捨てるのも勿体ないし、冷凍でもしといたら？」

　
　ハンバーガーを冷凍なんてしたことないけど……


　「冷凍……したら大丈夫かな？」
　「さあ……、やったことないから保証は出来ないけど、チンすれば大丈夫なんじゃない？」
　「うん、そだね……」

　ちょっぴり不安だけど、そのまま捨てるよりかは、うんとマシだよね？

　「しかし、智樹んとこの社長さんて面白いね？　普通、餞別にハンバーガー持たせる？　しかもこんな大量に」


　うん、確かに面白い人だし、変わった人だと思う。
　でもあの社長と長井さんがいたから、僕はＨＩＭＥとしてお仕事を続けてこれたのかもしれない。

　そう考えると、二人には感謝しかないんだけどね？


　「で？　その後彼とは？」

　和人の言う彼が、誰のことをさしているのかすぐに分かった僕は、苦笑いを浮かべて首を横に振った。

　「え、全く？」
　「……うん」
　「バイトは？　行ってるんだよね？」
　「バイトは辞めたって……」


　だから僕達を繋いでいた唯一の接点は、プッチンと切れちゃったんだ。


　「マジで？　いつ？」
　「んと……、あれからすぐ……だったみたい」

　矢継ぎ早な和人の質問に、僕は一つ一つ考えながら答えるけど、翔真くんのことを考えてしまうと、どうしても言葉が続かなくなってしまって……

　「あのさ、智樹のこと心配なのは分かるけどさ、そんなに次から次へ聞いたって、智樹も答えらんないでしょ？」

　見かねた相原さんが和人にストップをかけた。

　普段は何も考えてないように見える相原さんさんだけど、こうゆー時って凄く気が回るってゆーか……、慌てんほうなとこもいっぱいあるけど、案外冷静なとこもあるんだと思う。