H･I･M･E ーactressー

第26章 日常11：さよなら…言わなきゃだめ？

５

　僕は思わず長井さんに戸惑いの表情を向けた。

　でも長井さんは特に何も言うこともなく、ただ無言で首を縦に振った。

　だから、内心本当に貰っちゃって良いのか迷いもしたけど、結局受け取ることにした僕は、社長にお礼を言って頭を下げた。

　｢キミは、とても頑張ってくれたからね、少ないけど……ソーリーね？」

　社長はそう言って封筒を握った僕の手ごと握って、やっぱりサングラスの向こうに見える目を細めた。

　「それから、この間のギャラはいつも通り、キミのバンク口座に振り込んでおくから」
　「はい、お願いします」
　「あとは……、難しいことは僕よりもユーヤに聞いてくれるかな？」

　そこまで言って、「これで良い？」と長井さんに確認をする社長。


　相変わらず大事なことは人任せなんだから……

　ま、僕的にも社長から話を聞くよりも、要点しか言わないけど、長井さんから聞いた方がわかり易いし、良いんだけどね？


　「ああ、あとちょっと待って、これをね、キミにと思ってね」

　再度お礼を言って、席を立とうとした僕を、社長さんが引き止める。

　まだ何かあるんだろうかと首を傾げた僕の目の前に、テーブルの上に置かれていた袋が二つ……、差し出された。

　「え、あの、これ……は……？」


　まさかとは思うけと……、そんな筈ないよね？
　僕、嫌な予感しかしないんですけど？


　「ほら、前にキミと一緒にランチした時、キミここのバーガー美味しいって言ってたでしょ？」


　うん、確かに言ったよ？
　本当に美味しかったから。

　でも……だよ？


　「だからこれ、キミにボクからのプレゼントね」
　「え、あ、あの……、ええっ……？」


　プレゼントは嬉しいよ？
　でもさ、これとても一人で食べ切れる量じゃない……よね？

　え、困るんだけど……


　助けを求めるように長井さんに視線を向けると、長井さんは口元をヒクヒクさせてて……

　今にも吹き出しそうになるのを堪えているようにも見えた。


　ってゆーか、笑い事じゃないんだってばぁ……