434 / 688
第25章 scene5:チャペル
5
しおりを挟む
「ねぇ、見て?」
斗子さんに言われて、俯いていた顔を上げる。
「うわ……ぁ……」
想像していたのとは全然違う、いかにもな雰囲気の部屋の造りに、僕は思わず声を上げた。
斗子さんのサロン程豪華ではないけど、大きな鏡と、それとは別に姿見もあって、床には赤いカーペットまで敷いてあって、壁のフックには、僕が着る予定のウエディングドレスもちゃんとかかっている。
良かった……、僕騙されたわけじゃないんだ♪
ホッとした僕は、早速顔を覆っていたストールを外し、鏡の前に置かれた肘掛のある、ゆったり大きめな一人がけの椅子に腰を下ろした。
ふふ、クッションフワフワで、座り心地最高♪
「必要な物は全部揃ってる筈だ。後は任せる」
「分かったわ」
長井さんが斗子さんの肩をポンと叩き、僕達が入って来たのとは別のドアを開き、部屋から出て行く。
「さ、始めましょうか?」
その背中を見送った斗子さんが、鏡越しに僕に微笑みかけるから、
「お願い……します」
僕も鏡越しに斗子さんに向かって頭を下げた。
ウィッグを外され、キッチリと纏められた髪に、ネットが被せられると、ほんのちょっと……だけど、緊張感が高まって来るのを感じた。
顔と、それから首からデコルテ部分までしっかりファンデーションを塗られ、順番にメイクが施されて行くのを鏡越しに見ていると、徐々に僕が僕でなくなって行くのが分かって……
アイメイクを終えたところで、そっと瞼を閉じた僕は、いつも撮影前にしているのと同じように、自分自身に魔法をかけた。
僕はHIME……
彗星の如く現れた、ゲイビ界のスーパー男の娘アイドルのHIMEなんだ、と。
「出来たわよ? 後は着替えね?」
斗子さんに言われて瞼を開けた瞬間、僕は鏡に写った自分の姿には目を向けることなく静かに立ち上がり、着ていた服を、何の躊躇いもなく全部脱ぎ捨てた。
斗子さんに言われて、俯いていた顔を上げる。
「うわ……ぁ……」
想像していたのとは全然違う、いかにもな雰囲気の部屋の造りに、僕は思わず声を上げた。
斗子さんのサロン程豪華ではないけど、大きな鏡と、それとは別に姿見もあって、床には赤いカーペットまで敷いてあって、壁のフックには、僕が着る予定のウエディングドレスもちゃんとかかっている。
良かった……、僕騙されたわけじゃないんだ♪
ホッとした僕は、早速顔を覆っていたストールを外し、鏡の前に置かれた肘掛のある、ゆったり大きめな一人がけの椅子に腰を下ろした。
ふふ、クッションフワフワで、座り心地最高♪
「必要な物は全部揃ってる筈だ。後は任せる」
「分かったわ」
長井さんが斗子さんの肩をポンと叩き、僕達が入って来たのとは別のドアを開き、部屋から出て行く。
「さ、始めましょうか?」
その背中を見送った斗子さんが、鏡越しに僕に微笑みかけるから、
「お願い……します」
僕も鏡越しに斗子さんに向かって頭を下げた。
ウィッグを外され、キッチリと纏められた髪に、ネットが被せられると、ほんのちょっと……だけど、緊張感が高まって来るのを感じた。
顔と、それから首からデコルテ部分までしっかりファンデーションを塗られ、順番にメイクが施されて行くのを鏡越しに見ていると、徐々に僕が僕でなくなって行くのが分かって……
アイメイクを終えたところで、そっと瞼を閉じた僕は、いつも撮影前にしているのと同じように、自分自身に魔法をかけた。
僕はHIME……
彗星の如く現れた、ゲイビ界のスーパー男の娘アイドルのHIMEなんだ、と。
「出来たわよ? 後は着替えね?」
斗子さんに言われて瞼を開けた瞬間、僕は鏡に写った自分の姿には目を向けることなく静かに立ち上がり、着ていた服を、何の躊躇いもなく全部脱ぎ捨てた。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる