H･I･M･E ーactressー

第24章 ｓｃｅｎｅ５：ツルテカな僕

１

　長井さんの車で和人のマンションまで送って貰う間、僕はスマホに保存された画像を見ては、一人ニヤニヤしていた。

　そしたらさ、長井さんたらさ……

　「おい、いつまでニヤニヤしてんだ、気持ち悪い……」

　なんて言うんだもん……、酷いよね？

　だってさ、長井さんに撮って貰った写真の僕、すっごく可愛いんだもん♪
　ニヤケちゃうに決まってるじゃんねえ？

　「っつーかお前、その格好のままでＫＡＺＵの所に行くつもりか？」
　「え、ダメ？」
　「いや……、ダメってことはないが、かなり変だそぞ？」


　へ、変て……、そんなに変かな……？


　僕は車が赤信号で停車したタイミングで、助手席の窓を開け、サイドミラーに自分の顔を写した。

　「あっ……」


　はは……、これは確かに変だわ。


　だって僕ったら、服も髪も全部智樹・・・なのに、顔だけがＨＩＭＥ・・・・なんだもん。
　これじゃ長井さんに気持ち悪いって言われるのも無理はないかも……

　でも、メイクなんてするつもりもなかったし、まさかされるとも思ってなかったから、メイク落としとか持ってないし、服だって、下着以外の着替えなんて持って来てないし……


　どうしよう……


　僕が考えていると、長井さんが後ろのシートを親指で差し、ついでに無精髭の顎をクイッとしゃくった。

　「え、何……？」
　「いつも使ってる車が車検でな。トランクにあった荷物をこっちに移動しといたんだ」
　「え、じゃあ……」


　撮影用の衣装とかウイッグとか……、所謂《HIMEグッズ》があるってこと？


　「ね、僕着替えても良い？」
　「別に構わんが、この車じゃ無理だろ……」
　「あ……」

　確かに長井さんの言う通りだ。

　いつも移動に使ってる車は、後ろも天井もゆったりとしたワンボックスカーだけど、長井さんの車は普通のセダンタイプの車で、その中でお着替えしようと思ったら……

　「確かに無理かも……」

　それに外からも丸見えになっちゃう。

　「だろ……？　だからちょっと待ってろ」

　そう言って長井さんが、大型スーパーの駐車場へとハンドルを切った。