H･I･M･E ーactressー

第22章 日常10：僕、決めた！

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　ほぼ横並びで走っていた僕達の距離が、少しずつ離れて行く。

　すると、少し先を行き始めた翔真くんが自転車を止め、僕を振り返った。

　「智樹？」

　振り返った翔真くんの顔を見て、急に僕が黙ってしまったから、心配してるんだって分かった。

　だから僕は咄嗟に笑顔を浮かべると、翔真くんを追いかけるようにペダルを高速で漕いだ。

　「ごめん、俺、何か悪いこと聞いた？」

　追い付いた僕に、翔真くんが申し訳なさそうに眉を下げる。

　「ううん、そんなことないよ？　ただ、ずっと会ってないから、ちょっと色々思い出しちゃって……」
　「そっか。じゃあ……、行こうか？　あんま遅くなると、またニキビ野郎みたいな変質者が出るといけないからさ……｣
　「う、うん……」


　ってゆーか、ねぇ、聞かないの？
　僕がどんな家で育って、どうして一人で暮らしてるのか、って。

　あ、もしかして僕のことなんて興味ないとか？

　まさか、それはない……よね？
　だって、もしそうだとしたら、ちょっと寂し過ぎるもん。


　「どうした？」
　「え、あ、ううん、何でもないよ……」

　ゆっくりとした速度で自転車を走らせながら、時折翔真くんが僕を振り返るけど、何だか僕のペダル……凄く重たい。

　「あのね……」
　「ん、どうした？」

　思い切って声をかけた僕に、翔真くんがいつもと変わらない様子で振り返る。

　「あのね、聞いてくれる？」
　「何を……？」
　「僕がどうして一人で暮らしてるのか……」

　やっぱり知って欲しいんだ。
　翔真くんにとっては、もしかしたら興味のないことかもだけど、やっぱり僕は知って貰いたい。


　好きだから…
　翔真くんのことが好きだから、例え興味のないことであっても、翔真くんには知っていて欲しい、僕のこと……


　「うーん、それは良いんだけどさ、ここじゃなくても良くね？」
　「え……？」
　「だってほら、もうすぐアパート着くしさ、ゆつくり話せた方が良くね？」
　「あ……」

　僕全然気付いてなかったけど、いつの間にかアパートまでは目と鼻の先の距離まで来ていたみたいだ。