H･I･M･E ーactressー

第22章 日常10：僕、決めた！

３

　急に黙り込んだ僕を見て、和人がストローから離せずにいる僕の指をトンと叩いた。

　「やっばり気になる？」
　「うん……」


　気になるか気にならないか……って言ったら、やっぱりどうしても気になっちゃうんだよね、翔くんが童貞だったことが……


　「でもさ、キスの経験はあるって言ってたんでしょ？」
　「一応……ね？　でもさ、その先は（翔真くんがどこまで経験済みかは知らないけど）ほぼ未経験なわけじゃん？　なのに僕みたいなのが……って考えるとさ……」


　僕達はまだただの友達で、これからどんな関係になって行くのかは……正直分かんないけど、もしこの先僕達が恋人って呼べる関係になったとして、初めての相手が僕みたいにＡＶ出演経験有りな子じゃ、ちょっと申し訳ないような気がしちゃうんだよね……


　「でもさ、それって関係なくない？」
　「そお……？」
　「だって考えてみてもご覧なさいよ。お互い二十歳超えてて、未経験同士って方がよっぽどおかしいと思うけど？」


　そりゃそうだけども‥…


　でも僕の場合、普通に経験豊富ってのとは、ちょっと意味が違う。

　「そりゃね、智樹が悩む気持ちは分かるわよ？　私だってアイツと付き合う前はそれなりに悩んだからさ……」
　「そう……だよね……」


　ってゆーか、和人ってばさっきから口調がどんどんＫＡＺＵになってる気がするんだけど……、気のせい？


　「因みに……なんだけど、彼、不能ってわけじゃないわよね？」
　｢ブッ……！」

　いきなりとんでもないことを言い出すから、僕は思わず口に含んでいたアイスティーを吹き出してしまった。


　だってさ、だってさ……、ふ、ふ、ふ、不能……って！


　流石の僕もビックリ……ってゆーか、呆然ってゆーか……、なのに言った本人は全然気にしてない様子で……

　「あーあ、もぉ……、しょうがない子ね……」

　なんて言いながらテーブルの上を拭いている。


　はあ…、僕、相談する相手間違えたかも……
　でもさ、和人以外にこんな話し出来る人、いないんだもん。